合衆国憲法の「始原主義者」として解釈した場合、最高裁判事は現代のTaftになるリスクをはらんでいる。
最近、政府が5対4で負けたケースがあった。米連邦捜査局(FBI)は正当な理由なしに携帯電話のデータを入手し、それを利用してTimothy Carpenter容疑者を起訴したのである。
このケースでは容疑者の携帯電話の位置と移動データを利用することが、修正第4条の権利を侵害しているか否かが注目された。
2018年、裁判所は修正第4条が私有財産だけでなく、「合理的な適度のプライバシー」も保護するものであると判断した。
「デジタルデータ時代のプライバシーは既存の判例に当てはまらないものの、膨大な記録を通じて個人の動きや位置を追跡することは、過去の判例で想定されていたよりもはるかに困難である」
簡単に言えば、これはテクノロジー対権利の問題であり、先例はテクノロジーについていけず、譲渡不可能な権利でさえも生き残るために適応しなければならない。
4人の裁判官は、携帯電話の通話記録は政府が入手できる他の業務記録と同じであり、通話記録の持ち主の所有物ではないという理由で、異議を唱えた。判事のClarence Thomas氏は、91年前のTaftのように、記録はCarpenterの財産の一部として捜索されなかったため、彼の情報ではないと断言している(この論理に従えば、データを保護できる唯一の方法は、個人用サーバーを設置することくらいだ)。
法律までも変えるテクノロジーの潮流に逆らおうとする絶対主義者や構造主義者には、厳しくし過ぎない方が良いかもしれない。歴史の間違った側にいるように見える彼らだが、異なる主張の間でバランスを取るには時間がかかり、混乱と分断は続いてしまう。
議論は不可欠であり、将来に向かって急ぐことは、イノベーションを抑えようとすることと同じくらい困難である。成功したシステムは、民間企業や政府機関、消費者団体、電子プライバシー情報センター(EPIC)などの非政府組織(NGO)などを結び付ける。透明性、説明責任、健全な公開討論は、テクノロジーと規制の衝突を乗り切る上では非常に大切だ。
ところで、主に言論の自由を保護している合衆国憲法修正第1条でさえ、わいせつ、名誉毀損、虚偽広告の規制など、数え切れないほどの法的侵害を経験してきた。テクノロジーもこれに加担してしまっており、結果的に自宅へ郵送される荷物や受信トレイに届くスパムメールに対する規制が必要となってしまった。結局のところ、個人の自由は、他人の幸福の追求を犠牲にしてはならない。
この記事はAvastのブログを翻訳、編集したものです。
- Garry Kasparov
Human Right Foundation理事長
1963年旧ソ連アゼルバイジャン生まれ。現在はニューヨーク市在住。2005年からロシアの民主化運動を展開している。オックスフォード大学マーティンスクールの客員フェローとして、人と機械のコラボレーションを中心に講義を担当。ビジネスや学問、政治の領域を対象に意思決定、戦略、テクノロジー、人工知能をテーマとした講演活動を続けている。政治、認知、テクノロジー分野での執筆活動は大きな影響力を持っており、世界中の主要出版物で数多く取り上げられている。2016年にAvastのセキュリティアンバサダーに就任した。