松岡功の一言もの申す

「2025年の崖」に直結、SAP ERPの最新版への移行は進んでいるか

松岡功

2019-12-19 10:10

 経済産業省が昨年(2018年)発表したDX(デジタルトランスフォーメーション)リポートで警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題は、同じ年に旧来版のサポートが終了するSAP ERPの行方が大きく影響する。最新版「SAP S/4HANA」への移行は、SAPの思惑通りに進んでいるのか。

SAPが示すこれからのERPのあるべき姿とは

会見に臨むSAPジャパンの神沢正 バイスプレジデント デジタルコアクラウド事業本部長
会見に臨むSAPジャパンの神沢正 バイスプレジデント デジタルコアクラウド事業本部長

 SAPジャパンが先頃、S/4HANAおよびそのクラウド版の最新の状況について記者説明会を開いた。同社からすれば、SAP ERPのユーザーに対し、旧来版から最新版への移行を促進することが最大の眼目だ。それが2025年の崖問題をクリアすることにつながるとあって、注目度も高い。

 会見では、SAPジャパンの神沢正 バイスプレジデント デジタルコアクラウド事業本部長(写真)が、「これからのERP(統合基幹業務システム)はどうあるべきか」というところから話を始めた。その内容を示したのが、下の図1である。

図1.これからのERPのあるべき姿
図1.これからのERPのあるべき姿

 図1の左側は、これまでのERPが必要とされた理由として、業務の標準化や高度な経営管理、グローバルでの対応が可能なことを挙げている。一方、右側は、これからのERPが果たすべき役割として、SAPが提案している「インテリジェントエンタープライズ」を目指すことにあるとしている。

 インテリジェントエンタープライズとは、ERPをはじめとした業務アプリケーションとAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、アナリティクスなどのデジタル技術が融合した企業の次世代IT環境のことだ。神沢氏が図1を示しながら強調したのは、左と右を合わせたものが「次の20年の企業競争力の礎となるコアの構築」、すなわち、これからのERPのあるべき姿である。

 図2は、1972年に誕生したSAP ERPの変遷を示したものだ。S/4HANAが誕生したのは2015年。以来、これまでグローバルで1万2000社以上の顧客がS/4HANAを導入開始しており、そのうち3700社以上が稼働済みだという。日本でのユーザー数は「非公開」(神沢氏)のことだが、国内では半数以上がクラウド版の「SAP S/4HANA Cloud」を選択しているそうだ。

図2.SAP ERPの変遷
図2.SAP ERPの変遷

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  2. セキュリティ

    サイバー攻撃の“大規模感染”、調査でみえた2024年の脅威動向と課題解決策

  3. セキュリティ

    従業員のセキュリティ教育の成功に役立つ「従業員教育ToDoリスト」10ステップ

  4. セキュリティ

    IoTデバイスや重要インフラを標的としたサイバー攻撃が増加、2023年下半期グローバル脅威レポート

  5. セキュリティ

    急増する工場システムへのサイバー攻撃、現場の課題を解消し実効性あるOTセキュリティを実現するには

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]