海外コメンタリー

量子コンピューティング企業D-WaveのCEO:VWのバス経路最適化は重要な成果

Steve Ranger (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-12-31 08:30

 ポルトガルの首都リスボンのビジネス街と風光明媚(めいび)なウォーターフロントを行き来する路線バスが量子コンピューティングの奇妙な未来を想起させてくれると言っても、ピンとこない人が多いはずだ。

 リスボン郊外から市の中心部に向かって運行しているこのバス自体は何の変哲もない平凡なバスであり、混雑した道を行き来している他のバスとほとんど区別が付かない。しかしこのバス(そして同種のバス数台)がその他のバスと異なっているのは、量子コンピューティングを現実世界で初めて応用した成果の1つだという点にある。

 Volkswagenと、量子コンピューティングを手がける企業D-Waveがリスボンで11月に実施したパイロットプロジェクトによって、26の停留所が4本のバス路線で結ばれた。そのうちの1本は、「Web Summit」カンファレンスの開催地と、市内中心部にあるマルケス・デ・ポンバルの交通拠点を結んでいる。米ZDNetもこの路線を使って市内に入った。

 Volkswagenのチームは停留所間を最適な経路で結ぶ量子アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、バス会社の個々のバスに対して最も迅速な経路を算出し、リアルタイムに近い時間で最適化するようになっている。Volkswagenによると、その目的は従来の運行サービスではなく、量子アルゴリズムを活用することで、経路途中の渋滞が始まりつつある箇所を早めに検出して避けるというものだ。

 Volkswagenはさらなるメリットが生み出されることも願っている。というのも、それぞれのバスは個別に最適化された経路を決定する際、自ら渋滞を生み出さないようになっているためだ。つまり、他の旅行者もよりスムーズに移動できるようになるわけだ。

 Volkswagenの最高情報責任者(CIO)Martin Hofmann氏は、量子コンピューティング分野で同社が持つ知識を深めるとともに、このテクノロジーを有効に利用する方法についてより深く理解したいと考えていると語り、「輸送の最適化は潜在的な応用事例の1つだ」と続けた。

 Volkswagenはこの開発を継続していく計画だと述べた。ここで考えられている用途は、バス会社がこういったシステムを利用し、通常運行に加えて一時的な臨時便を追加していくというものだ。これは、例えば市内で大きなイベントが開催された時に出てくる臨時便の要求に応えるための手軽な方法と言える。

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