ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)は未来のテクノロジーのように聞こえるかもしれないが、脳からの電気信号を記録したり、制御テクノロジーに利用したりできるようにするシステムの採用が始まりつつある。BCIまわりの開発作業の大半は、医療分野での利用に集中しているが、コンシューマー分野でも、ゲームエクスペリエンスの向上から、上司による部下の作業効率の追跡に至るまで、BCIのさまざまな応用が模索されている。
BCIは、先進テクノロジーの黎明期から安定期までのステージを示すGartnerの指標であるハイプサイクルで取り上げられるまでになっている。2018年の新興テクノロジーハイプサイクルでは、BCIは「過剰期待の頂」にあるとされていた。
このテクノロジーにおける特にコンシューマー分野での応用を見た場合、期待が現実よりも先を走っているという点に驚きはないだろう。BCIの最も有効かつ興味深い利用事例は、まだ研究段階の域を脱していない。その多くは、けがや病気で何らかの障がいを抱えるようになった人々の能力回復支援を目的としている一方、BCIコントローラーを用いたゲームや、思考によるドローンの操縦など、同テクノロジーが将来的にコンシューマーによってどのように利用される可能性があるのかを示すものもいくつか存在している。
BCIがコンシューマーテクノロジーにもたらす最も大きな影響はおそらく、デバイスとわれわれのやり取りを根本から変えることでもたらされるだろう。
ここで、アイデンティティーの認証を例として挙げてみよう。現在のところ、ソフトウェアやハードウェアにアクセスする最も一般的な手段は依然としてパスワードであり、それには厄介な問題がつきまとう。パスワードを何にすればよいのかに悩まされる一方、忘れるのは簡単であり、ハッキングによる盗難も頻繁に発生している。研究者らは既に、パスワードの代替としての「passthoughts」(パス思考)を実験中であり、イヤホン内部に埋め込まれたBCIによって思考を捉え、信頼性の十分高い認証手段を実現できることを示している。
デバイスとわれわれのやり取りをBCIが変え得る事例は他にもある。Facebookをはじめとする企業はBCIに大きく投資している。Facebookは最近、BCIに取り組む新興企業CTRL-labsを、最高10億ドル(約1090億円)とも推定されている金額で買収した。CTRL-labsは、EMG(筋電図)を用いて皮膚から神経の活動電位を読み取り、デジタルデバイスの制御に利用できる信号に変換するリストバンド型の装置を開発している。ユーザーはCTRL-labsのような企業のシステムを用いることで、アプリの起動や終了といった操作を、マウスのクリックによってではなく、ちょっとしたジェスチャーによって行えるようになる。