2020年が明けた。朝日インタラクティブが運営するZDNet Japan(以下、ZD)は大企業のIT部門を中心に、TechRepublic Japan(同TR)は中堅中小企業のIT部門と大企業の非IT部門を中心に、それぞれ議論すべき話題を提供している。2つの編集部が意見を出し合い、2019年を振り返りつつ、2020年は何を議論すべきなのかをまとめた。第1回から引き続き、参加者は以下の通り。
ZDNet Japan編集部:國谷武史(編集長)、藤本和彦、大場みのり、海外記事担当(以下、海担)
TechRepublic Japan編集部:田中好伸(編集長、ZD副編集長を兼務)、河部恭紀、藤代格
(左から)TechRepublic田中編集長、ZDNet國谷編集長 撮影:山川晶之 (編集部)
「カスタマーサクセス」が主張される時代
ZD國谷:今回の「カスタマーサクセス」は、これまでとは毛色の異なるテーマですが、カスタマーサクセスはどの企業にも共通するテーマやキーワードとして浸透しているのでしょうか。
TR藤代:2019年に耳にする機会が増えたと感じているのがこのキーワードです。SaaSベンダー、とくに本国を米国に構えるベンダーが口にすることが多かったですね。
SaaSは任意のタイミングですぐに導入、解約できるという特長があります。長期検討が必須でなく気軽に導入できるため、ユーザーのシステム活用のハードルをぐっと下げたかたちです。ITの大衆化に大きく貢献したことで、よりニーズに近いところまでを提供できるサービスである必要が出てきたということでしょうか。
言葉としては以前からありましたが、特に日本においてカスタマーサクセスを担っていたのは、システムインテグレーター(SIer)などの直にユーザーと接する企業だった気がしています。“ユーザーが思い描いたことを実現できるパッケージの製品、サービス”ではなく、“伺ったニーズを手組みで実現する”という違いはありますが。個社個別の対応ですね。
個人的に疑問を感じているのは、ユーザーが思い描いたことまでを実現するサービスは本当にあり得るのか、という点です。例えば先ほど話に出たRPA(ロボティックプロセスオートメーション)では、“打ち込むのが面倒”という単純作業は解消できると思います。
しかし、顧客需要が細分化しがちなケースにおいて、どのレイヤーでどこまでをどう実現したいかはユーザーごとでまちまちです。最終的なニーズが細分化した場合、果たしてどこまでの満足度を提供できるのかなと。中途半端な提供となった場合、誰も喜ばない、誰にも受けいれられないサービスとなりかねません。
実現すれば大きなターニングポイントになることは間違いないでしょう。先ほど藤本さんから拡張分析のお話もありましたが、例えばRPA 2.0として語られる、ユーザー業務のITによる代替に留まらない、ユーザーへ提案する“攻めのIT”などが実現すれば、それこそ仕事の仕方は激変します。2020年はこの動向を注視していきたいと思っています。