日立製作所は12月24日、データサイエンティストの育成を目的とした初の社内ハッカソンを都内の「日立アカデミー研修センタ」で開催した。イベントの企画・運営支援としてリクルートキャリアが協力、日立グループ内から29人が参加し、データ分析の技術を競い合った。
日立グループの社員29人が丸1日かけて課題に取り組んだ
日立は現在、データ活用によってデジタルイノベーションを推進するための製品・サービス群である「Lumada(ルマーダ)」関連事業に注力しており、それを支えるデジタル人材を2021年度までにグループ内で3万人育成する計画となっている。その一環として、データサイエンティストを2021年度までに3000人育成するという目標を2018年6月に発表している。
今回のハッカソンはその育成強化施策の一環であり、社内のエントリーレベルのデータサイエンティストのスキル向上を目的として行われた。同社では、グループ横断で実務者から研究者までが参加する約1000人規模のデータサイエンティストのコミュニティーが運営されているが、育成活動の推進力となるコミュニティーを活性化させる目的もあって、コミュニティー内で参加者を募る形で実施した。
参加条件は、体系的にデータサイエンスの基礎を学んでいるベースラインレベル程度のスキルを有するコミュニティーメンバーで、IT系、OT(制御・運用技術)系、研究所と幅広い領域の社員がエントリーした。その他に、プロフェッショナルレベルに認定されている社員が、技術メンターとして5人参加している。
日立グループでは、社内IT環境から利用できるデータ分析環境や、AIを活用するための各種OSS(オープンソースソフトウェア)ツール・エンジニアリングリソースなどを含めた技術プラットフォームを社員向けに提供していて、分析にはこれらのツール群を活用した。また同社のデータサイエンティスト育成に関する行動指針として「各分野の専門家の協働による課題解決」「専門家同士が研さんをしながらスキルアップに取り組む」というテーマがある中で、所属が異なり、普段はさまざまな業務に取り組む参加者同士がチームを組み周囲で相談しつつ、メンターのアドバイスを受けながらそれぞれがデータ分析に取り組んだ。
参加者はプロフェッショナルスキルを持つメンターに質問しながら分析を進めた
社会課題解決をテーマにオーストリアの電力消費量を予測
ハッカソンのテーマは、EU(欧州連合)の電力消費データと関連する気象情報などのオープンデータを用いて、オーストリアにおける特定の時期の電力消費量の予測を行うというもの。あくまで業務や社会課題解決といった実践面を意識して、多くのハッカソン運営サービスの実績を持つリクルートキャリアが、日立グループのビジネス領域を考慮した上でテーマを選定した。具体的には2014年12月1日から2018年末までのデータを学習用データとして提供し、2019年1月1日から4月30日のオーストリアの電力消費量を予測、実際の電力消費量と比べて近いスコアとなった上位3人が表彰された。
ハッカソンの最後には表彰された3人がプレゼンテーションを行い、全員にソースコードを公開してどのような推論のもと、どのようなモデルを使い、どうやって数値を算出したかについて説明、質疑応答も行われた。1位に輝いたのは、日立システムズ 研究開発本部 事業開発センタの森廣恭平氏で、「日立グループ内の優秀なデータサイエンティストが多数集まり、それぞれの知見を交換し研さんし合える有意義なハッカソンだった。継続的に開催し、グループ全体のデータサイエンス力と横のつながりを高めていってほしい」と受賞コメントを語った。
受賞後にプレゼンテーションを行う日立システムズの森廣恭平氏
また、2位は日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット デジタルソリューション推進本部 AIビジネス推進部の小嶋祐人氏、3位は同 サービス&プラットフォームビジネスユニット IoT・クラウドサービス事業部 データマネジメント本部 データベースシステム部の竹内智彦氏という結果となった。
これまでの活動を通じて、日立のデータサイエンティストは目標発表段階の700人から、その後半年で1000人にまで増え、現在はさらに増えているという。今後も、「開催回ごとにデータサイエンティストのレベル分けをするなどの形で社内ハッカソンの継続的な開催を予定している」(日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 デジタルソリューション推進本部 AIビジネス推進部 主管技師の原英一氏)としている。
(右から)表彰された1位の森廣恭平氏(日立システムズ)、2位の小嶋祐人氏(日立製作所)、3位の竹内智彦氏(同)