――運営を預かる立場としては、残業を減らすよりも接客時間を増やしたいということだろうか。
大森氏 はい。お客さまとの時間を大切にしたいという思いでした。
高橋氏 他のアパレルだと、(店舗スタッフに)日々求められるものは売り上げです。そのなかで販売という役割があります。僕らはモノを売らない店舗として運営しています。あくまでも店舗の役割は“体験”ということです。採寸とコミュニケーションに特化しています。
お客さまのニーズをヒアリングし、お客さまのことを考えて接客するので、求められる業務内容が他のアパレルとは大きく異なります。ただ、前述のようにデータの入力業務が発生するため、Tegakiの利用に踏み切りました。
FABRIC TOKYO オペレーショングループマネージャー 大森慎平氏
大森氏 (タブレットなどを使わない理由は)紙の信用性があるためです。採寸は小一時間ほどかかりますが、仮にシステムエラーなどの不具合が生じた場合、データを失ってしまうことになります。さらに店舗スタッフのヒアリングは採寸データ以外にもお客さまの趣味や嗜好なども記録しています。
店舗スタッフのUX(ユーザー体験)を考えると、紙の方が圧倒的なパフォーマンスを発揮できるから。紙を残しつつ、いかにデータとひも付けるか。そうした考えから、Tegakiを利用させていただいています。
――Tegakiを選択した理由を聞かせてほしい。
大森氏 別の会社のOCRシステムも検討しましたが、Cogent LabsはAPI連携できたのが決め手でした。われわれが使うデータベースとの相性もよく、認識精度も他社を大きく上回っていました。別の会社の認識率は97~98%ですが、Tegakiは100%。
体型データをもとにシャツやスーツを作るため、データに間違いは許されません。加えて、自動化プロセスで人間の目視を必要とする場面が途中で発生するのもおかしな話ですよね。最初と最後のチェックだけでいいというのがありました。
鈴木氏 私たちCogent Labsが目指しているのは、AI(人工知能)が人間の作業を代替することです。ただ、ユースケースによっては人間が介入することもあります。Tegakiは金融機関などでもご利用いただいていますが、生命保険や住宅ローンの申し込みはデータの正確性を重視するため、人によるチェックが加わるケースが多いです。一方でアンケートなどの場合は人間が介入せずに集計にご利用いただいています。
――Tegakiを導入してどのように業務は変化しただろうか。
大森氏 1年ほど経過したが、われわれのデータベースに起因するトラブルはありましたが、Tegakiの不具合は一切ありませんでした。今のところですけど(笑)。
採寸した体型データの用紙はスキャンし、人間がダブルチェックしていますが、実際には数値が異なるケースもあります。それは乱筆や誤字、紙が汚れているなど多様な原因があるんですが、Tegakiによるトラブルではありません。
Tegaki導入後はデータ入力に要していた時間が大きく短縮できています。時間の尺度というよりも“濃度”と説明した方が正しいと思いますが、1日の濃度が高まった。FABRIC TOKYOの店舗と本社スタッフが関わる新プロジェクトを遂行できるようになったのも大きいです。