引越奉行はあなた--データセンターの中身を“断捨離”するポイント - (page 3)

細川涼子 (Dell Technologies)

2020-01-14 06:45

 データセンターの引き渡しまでの時間が限られている(規模にもよりますが、おおむね1年以内)場合は、トップダウンで停止時間を許容してもらい、業務を停めて数回の引っ越しで一気に物理搬送する。引越先にあわせた快適な環境づくりは、引っ越しした後で順次考えよう、というパターンになることが多いです。

 それ以外の場合は、ある程度インフラの更改を交えて、引越先に新規の設備を整えながら順次システム単位で移転していくことが一般的です。そう、一家4~5人程度であれば一両日中に引っ越しも可能ですが、データセンターの移転はいわば20~30人以上の大家族の引っ越しにあたります。

 それぞれの生活もありますし、休みの日も違います。学校や仕事の都合でしばらく今の家に残る人もいるでしょう。「絶対に仕事の休みは取れないから準備は全部やっておいて!」という人もいるかもしれません。

 まずは家族全員が使う共用のリビングやキッチン、バストイレなどの設備や備品は新生活にあわせて新居に買っておき、個々人の私物(=各システムのサーバーやデータ)だけタイミングに合わせて引っ越すのがよさそうです。

 また、住居でも「和室を洋室にしたい」「バラバラな家具をやめて統一感のあるインテリアにしたい」などの大規模なイメージチェンジを住みながら実施するのはなかなか難しいものです。引っ越しの時にやってしまいたいですね。

 データセンター環境でいえば古いバージョンのインフラ環境、非効率だけれど手を打ちにくいネットワーク環境……など、なかなか手を打てなかった課題に手を付けることのできる最大のチャンスがデータセンター移転です。時間がない場合もありますが、何か刷新できる部分がないかぜひ考えてみてください。

 実際には「インフラ更改」と「物理移設」の二つは排他的なものではなく、ある程度は更改し、ある程度は搬送するのが一般的です。自社の移転がどちらに近いのか、どちらに寄せるべきなのかは、引っ越しまでの残り時間、インフラの更改計画などにあわせて検討します。

 ちなみに「物理移転」と「インフラ更改」のいいとこ取りとして、インフラを刷新する計画は立てるものの、新データセンターの事業者が提供するホスティングやクラウドサービスを利用し、インフラの調達や構築のスピードは短縮するという選択肢もあります。

 さて、おおまかな引っ越しの方針が決まったら、では「持っていくもの、買うもの、捨てるもの」の選別です。新しい生活に合わせた家具や設備を買うのはワクワクしますね!

 一方で、愛着があって捨てられないものも存在します。とはいえ、今あるものをすべて運ぶわけにはいきません。不要なものはきっちり仕分けして、データセンターも断捨離しましょう。

  • 必ず買うもの
    なるべく物理搬送する場合でも必ず調達する必要のあるものには、このようなものがあります。
    (1)他の引っ越し荷物を入れるより先に準備、設置しなくてはならないもの
    (2)持っていくことができないもの(そもそも自社の持ち物でないもの、引越先のラックや耐荷重などの規格に合わないもの)
    (3)「引っ越しを機に実現したい要望」のために必要なもの

 家でいえばカーペットなどを敷きたければ、荷物を入れる前にする必要がありますね(また、当然ですが元の家から持っていくこともできません)。データセンターではラック、免震床などは引越先のデータセンターから払い出してもらうか、自社で調達する必要があります。

 また、極力買い物を減らしたい場合でも、必ず準備する必要があるのはネットワーク機器一式です。すべてのネットワークが切り替わるまで、現在のデータセンターを経由して既存の接続先に連携する場合もあります。もちろんネットワーク経由でシステムを切り替えるためにも必要です。

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