20年前、世界が新しいミレニアム(千年紀)の始まりを祝う中で、世界各国のIT専門家らは2000年問題の発生を予想して冷や汗をかいていた。2000年問題とは、日付の年部分を2桁の数字で管理しているシステムにおいて、「01/01/00」と記録された2000年1月1日を1900年の1月1日とコンピューターが解釈すれば、重要なシステムが停止するおそれがあるという問題だ。
開発者らが2000年問題の発生を見越して十分に備えたため、大きな事件は起こらなかった。だが、それから20年が経って、手っ取り早い解決策を取った者や、問題を2020年に先送りしただけの者もいることが明らかになった。
2000年問題の再来とでもいうべき2020年問題が実際に複数発生したようだ。
例を挙げると、ニューヨーク市のパーキングメーターに搭載されているソフトウェアに考慮漏れが存在していたため、新年を迎えた段階で支払いオプションがオフラインとなった結果、クレジットカードでの支払いが不可能になった。同市の交通当局は現在、1万4000台あるパーキングメーターを1台ずつ手作業でアップデートしており、この問題を「Y2K2Xソフトウェア障害」と呼んでいる。
2Kが開発したプロレスゲーム「WWE 2K20」(不幸にも、問題を予見したかのような名前だ)は、新年を迎えた直後にクラッシュしたという。なお、ゲーマーらはソーシャルメディア上で、日付を前日に戻すことでクラッシュを回避できると指摘している。
独ハンブルグの地下鉄システムに発生した障害は、公式には2020年問題として分類されていない。しかしこの障害は、新年のソフトウェアアップデートがうまくいかなかったために、一部で交通に乱れが生じたというものだ。
では、コンピューターシステムが突如として20年も前のバグに悩まされるようになったのはなぜだろうか?それらのなかには、当時多くの開発者が2000年問題に対処するために用いた、「ピボットイヤー」(要の年)とも称されるテクニックが原因となっているものもある。
ここで、西暦年を下2桁で管理しているシステムがあると考えてほしい。このシステムを使用している企業の創業が1920年であり、創業時点よりも古い年の情報を保持する必要がないのであれば、ピボットイヤーとして「20」を設定することになる。つまり、年データが00~20であれば、2000年以降の年として扱い、21~99であれば1900年代の年として扱うわけだ。