自動車業界でもプラットフォーマーの立場に--マイクロソフトの施策とは

阿久津良和

2020-01-16 06:00

 日本マイクロソフトは1月15日、自動車業界に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを紹介する記者説明会を開催した。米Microsoftで自動車業界向け事業の責任者を務めるゼネラルマネージャーのSanjay Ravi氏は、「顧客のデータでマネタイズしない」と強調しつつ、テクノロジーパートナーとして自動運転自動車開発や製造、マーケティングなど6分野で多角的に注力していることを明らかにした。

Microsoft Automotive Industry ゼネラルマネージャーのSanjay Ravi氏
Microsoft Automotive Industry ゼネラルマネージャーのSanjay Ravi氏

 コンサルティング企業のMcKinsey&Companyは、2030年までに自動車市場が6兆6000億ドルに達し、新車販売の最大25%が電気自動車となり、新車全体の10~15%で自動運転が可能になると予想している。また、現在は新車の25%未満にとどまるコネクテッドカー(インターネットへ常時接続する自動車)も100%に達するという。

 Ravi氏は、「自動車産業の歴史で最もエキサイティングな時代を迎えた。『接続性』『自動運転』『ライドシェア(相乗りサービス)』『電気自動車』が同時に発展し、自動車産業の未来を変えようとしている」と分析し、同社のインテリジェントクラウド&エッジ戦略を自動車業界に当てはめた。「接続性がない自動車でもインテリジェンスを必要とする。車両内で複雑なAI(人工知能)モデルを実行するために、インテリジェントエッジが欠かせない。われわれはインテリジェントクラウドというソリューションを提供し、自動車業界の需要を満たすためにインテリジェントエッジの提供に取り組んできた」(Ravi氏)

 近年のマイクロソフトは、業種に特化したDX戦略を推し進めている。自動車業界との連携は、国内ではトヨタ自動車、Renault・日産・三菱のアライアンス、海外ではAudi、BMW、Daimler、Fordと行っている。

 例えば、2018年10月にはVolkswagenが発表したクラウドおよびエッジによるコネクテッドカープラットフォーム「Microsoft Connected Vehicle Platform」は、Renault・日産・三菱アライアンスもパートナーシップを締結している。2019年2月には、ビッグデータプラットフォーム「eXtollo」をDaimlerと共同開発し、Azure Key Vaultを用いたデータ保護環境を実現した。同年5月には、Audiが8PBのデータを用いた自動運転自動車のシミュレーションワークフローをMicrosoft Azure上で開発。数年後には200PBに及ぶという。BMWともMicrosoft Azure上に構築した顧客向けサービスや、メーカーによるデータのサイロ化を回避し、独自システム特有の課題を解決する「Open Manufacturing Platform」で協力関係にある。

Microsoft Connected Vehicle Platformの概要
Microsoft Connected Vehicle Platformの概要

 競合他社がせめぎ合う自動車業界でMicrosoftは、「われわれは3つの原則を持っている。1つはテクノロジープロバイダーとして自動車を製造するつもりはなく、MaaS(Mobility as a Service)ビジネスにも直接参入しないことで、(自動車業界の企業との)競合を回避する。2つ目はデータ管理機能と洞察を得るためのAI機能を提供し、データを所有しない。自動車業界とビジネスモデルの競合を回避するためだ。3つ目は自動車製造・販売企業のブランド体験を差別化するため、Microsoftブランドの体験を社内にプッシュしない」(Ravi氏)と、あくまでプラットフォーマーの地位にとどまることを強調した。

各注力領域における具体的なITソリューション 各注力領域における具体的なITソリューション
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 その上で「コネクテッドカー」「自動運転車の開発」「スマートモビリティー」「マーケティング、セールス、サービス」「コネクテッドファクトリー」「新ソリューション」の6分野に注力するという。

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