ライフサイクルで考える「契約マネジメント」--リーガルテック先進国の現在 - (page 2)

酒井貴徳 (Holmes) 須貝崇史 (Holmes)

2020-01-20 07:15

リーガルテック先進国アメリカでの動向

 アメリカはリーガルテック先進国として有名だ。そんな中、様々な形で契約マネジメントサービスを提供するベンダーが増えている。ある調査によれば、契約ライフサイクルマネジメント(CLM)市場の想定される最大市場規模を200億ドル超と推計しており、近年非常に盛り上がりを見せる市場のひとつである。

 企業の様々な情報を管理する統合基幹業務システム(ERP)は、ヒト・モノ・カネといったリソースを統合的にマネジメントする。しかし、その裏には全て契約が流れている。そこで、契約を主軸にしたマネジメントを採用する企業が増えている。ユニコーン企業に躍り出た契約マネジメント企業のIcertisが提供するサービスは、世界の名だたるトップ企業に採用されている。

 また、アメリカでは契約マネジメントを専門に扱う職種もあり、平均年収は800万円以上と、契約マネジメントにそれ相応のコストをかけているといえる。それほど、契約マネジメントが事業成長に欠かせないということだろう。

 このように、契約マネジメントという概念は、アメリカではかなり一般的になってきている。

 契約というと一通の契約書を連想したり、法務部だけの業務だと思われたりしがちだ。しかし、契約は一部署が動いて終わりではなく、契約に関わる全ての部署が有機的に連関して初めて実現する。したがって、契約を管理しようとすれば、それはおのずと部署間をまたいだものになる。しかも、企業は無数の契約で成り立っている。だからこそ契約を主軸としたマネジメントが必要で、アメリカでは契約マネジメントの採用が進んでいるのだ。

日本でも「契約マネジメント」を導入する契機

 日本においても、このような事情は変わらない。日本企業もやはり無数の契約に溢れており、事業形態も複雑化して、より把握しにくくなる中で、契約マネジメント体制の整備が追いついていない部分も多い。これからさらに複雑になる経済社会に対応していくには、抜本的な契約管理体制の見直しを図ることが必須だ。

 一方、日本でもリーガルテックのサービスが相次いで登場、運用されるようになってきており、法改正や裁判のIT化などの施策も相まって、法務領域にもデジタルトランスフォーメーションの波が来ている。ここまで紹介してきた契約マネジメントの考え方を取り入れて組織のレベルを上げる最適な機会が訪れている。

(第3回は2月中旬にて掲載予定)

酒井 貴徳
Holmes CEO室 室長

日本、ニューヨーク州で現役弁護士を務める。2009年に東京大学法科大学院修了後、2010年に弁護士登録(第2東京弁護士会、63期)。2011年から、西村あさひ法律事務所でM&Aやスタートアップ支援を担当。その後、アメリカへ留学。2018年にバージニア大学ロースクールを卒業し、ニューヨークの法律事務所 Debevoise & Plimpton LLPに勤務。2019年、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後の2019年9月にHolmes入社。事業戦略の策定や組織構築、ファイナンスや提携など、事業を成長させるための業務に従事している。
須貝 崇史
Holmes CEO室 兼 フィールドセールスグループ

中央大学法科大学院卒、2019年に司法試験に合格。Holmesでインターンを経験したのち、司法修習の道を選ばずにそのまま正社員として入社。 ベンチャー、スタートアップ企業のサービスを独自の視点で分析、考察するブログ「Startup Labo」を個人で運営。

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