センサーを使えば、われわれの住む物理世界を隅々まで捕らえることができる。では、そのデータ全てをまとめ上げるのは誰の仕事になるのだろうか?

現実世界のデジタルツイン、すなわち新世代の空間コンピューティングを支える仮想インフラとでも言うべきものを生み出すための複合現実(MR)技術の開発競争において、今のところはGoogleが先頭を走っている。しかし、センサーやソフトウェア、自律型ソリューションを手がけるHexagonの開発したクラウドベースの仮想化プラットフォームは、現実世界を極めて細かいところまで再現したデジタル世界がいかに斬新かつ有益であるかを垣間見せてくれる。
Hexagonの「HxDR」プラットフォームは基本的に、空中や地上のセンサーから、そしてユビキタスな存在となっているモバイル機器のセンサーから取得した現実世界のデータをシームレスな形で組み合わせるというものだ。これらのデータは全て数値化/コード化され、さまざまな方法でユーザーが操作できる動的な3Dモデルに姿を変える。
例を挙げると、都市計画者は古い建築物を取り壊し、都市公園やインフラといったプロジェクトのデジタル表現を組み込むことができる。これまでは想像図や、全てをアニメーションにした可視化表現だったものを本物そっくりに、図書館の正面玄関のデザインに至るまでリアルに表現した仮想都市として命を吹き込めるのだ。
ある建物に関する情報を知りたいと思えば、手元のデバイス(スマートフォンであろうと、ウェアラブル製品であろうと)に搭載されているカメラを向けるだけで済むという時代は間近に迫っている。
エンタープライズ向けの実用的な3DモデリングツールとしてロールアウトされているHxDRは、その方向に踏み出した製品であり、多くの面でPoC(概念実証)に使えるものとなっている。これは、空中からの映像やレーザー計測、屋内外からの地形測定、モバイル機器の地図データをまとめ上げるクラウドベースのプラットフォームがどのようなものになるのかを示す典型的な製品だ。
Hexagonのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)Ola Rollén氏は「顧客はHxDRを利用することで、自らのスマートデジタルリアリティーを生み出せる」と述べるとともに、「われわれは、世界トップレベルのセンサーおよび可視化サービスのポートフォリオによって取得した大量のデータライブラリーを有しているため、この革新的なプラットフォームをもたらす上でのユニークな位置につけている。われわれは、研究開発(R&D)に加えて、TechnodigitやLuciad、MyVR、そして最も新しいところではMelown Technologiesといった企業の戦略的買収を通じてこういったポートフォリオを継続的に強化してきている」と述べている。
ただ同社のビジネスモデルは、MRを実現するための完成したデジタルツインを提供するというものにはなっていない。ユーザーは、3.6ペタバイトに達して今なお成長を続けるHexagonライブラリーから現実世界の複製をライセンス供与してもらうことになる。ただ、このライブラリーがさまざまな角度から地球全体を捕捉したものではないことは同社も理解している。この点を補うため、ユーザーが捕捉した現実データのファイルをHxDRにドラッグ&ドロップすれば、自動化されたメッシュ機能が全てをまとめ上げるようになっている。
HxDRは、建築設計や都市計画だけではなく、メディア関係やエンターテインメント分野のプロフェッショナルによるコンテンツ制作用のロケ地検索にも利用できるはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。