本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクルのKenneth Johansen CEO(最高経営責任者)と、トレンドマイクロの岡本勝之 セキュリティエバンジェリストの発言を紹介する。
「マルチクラウド利用が広がるのはOracle Cloudにとってもいいことだ」
(日本オラクル Kenneth Johansen CEO)
日本オラクルのKenneth Johansen CEO
日本オラクルが先頃、2020年の事業方針に関する記者説明会を開き、2019年9月に同社の経営トップとして執行役CEOに就任したKenneth Johansen氏が国内で初めて会見を行った。同氏の冒頭の発言は、その質疑応答で、マルチクラウド利用が広がる中での「Oracle Cloud」の存在感について聞いた筆者の質問に答えたものである。
Johansen氏は会見の冒頭で、「日本オラクルのCEO就任から約5カ月の間、多くの企業や公共機関などのお客さまにお会いして、とても勇気をいただいた。というのは、日本のお客さまはデジタルトランスフォーメーション(DX)志向が非常に強いからだ。日本では今、高齢化をはじめとしてさまざまな社会課題が浮上しているが、DXによってそうした課題に対応していけるよう、当社としても尽力していきたい」との姿勢を明確に示した。
さて、マルチクラウドに関する質問だが、正確に言うと「多くの企業でこれからマルチクラウド利用が広がっていくと見られているが、その中でOracle Cloudはどのように存在感を高めていくか」という内容だ。これに対し、Johansen氏は冒頭の発言に続けて次のように答えた。
「マルチクラウドを利用したいというお客さまのニーズに対し、Oracle Cloudはオープンなスタンスでしっかりとお応えしていく。オープンなスタンスはOracleが創業以来、堅持してきたもので、データベースを複数のOSやハードウェアで利用できるようにしてきたのがその代表例だ。それと同じく、Oracle Cloudも他のクラウドと連携して利用できる環境を整えていく」
実は、筆者が上記のように質問したのは、Oracleのクラウド事業は後発だったこともあって、競合大手にはまだ追いつけていない中で、競争力の高いOracleのデータベースがクラウド上でもこれまでのオンプレミスと同様に利用できる環境が整えば、マルチクラウドの1つとして欠かせない存在になる可能性が高い、との見方に基づいたものだ。
しかし、質問がこうした点を踏まえた形ではなく説明不足だったようで、肝心の「競争力を高める手立て」を明確に聞くことはできなかった。ただ、冒頭の発言は「存在感を高める意思表示」とも受け取れる。果たして、筆者の見方が合っているかどうか、注目していきたい。
日本オラクルの事業方針説明会見にはKenneth Johansen CEOとPeter Fleischmann 専務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括(右)が登壇した