ITで業務効率は上がる--でも「情報が多すぎる」「ツールが多すぎて気が散る」 - (page 2)

阿久津良和

2020-01-29 07:15

 際立ったのは「飲み会」(20代=33%)という回答。世間では若者の飲み会離れが叫ばれているが、情報交換という観点においては有益性があることを示している。興味深いのは、定例会議(13.8%)やメール(2.8%)、SNS(3.5%)が著しく低く、Dropbox Japan ジャパンマーケティングリード 上原正太郎氏は「定例会議やメールによるやり取りでの情報共有は形骸化」したと述べても過言ではないだろう。

Dropbox Japan ジャパンマーケティングリード 上原正太郎氏
Dropbox Japan ジャパンマーケティングリード 上原正太郎氏

 上原氏は「各分野で業績を上げている人々に共通するのは『集中』。弊社はプログラマーたちがミーティングやバグ修正に時間を費やすのではなく、いかに集中できるような環境を整えるか、に焦点を当てる」と調査報告をまとめた。

 第2部では法政大学 経営学部・准教授 商学博士 永山晋氏を招いてクロストークセッションを開催。ファシリテーターを務めた上原氏が「ITツールを活用したコミュニケーションを通じて、創造性や効率性を高められるか。まずは調査結果の感想を」と尋ねたところ、永山氏は以下のように語った。

 「研究と符号するところがあった。最新の脳科学では3つの機能が有機的に機能することでクリエイティビティが高まるといわれている。具体的には、人がリラックスした状態になるDMN(デフォルトモードネットワーク)、アイデアを言語化、理論化するEN(エグゼクティブネットワーク)、両者の切り替えを担うSN(セリエンスネットワーク)。アプリの通知はENの機能を阻害し、考える時間がないという人はDMNが少ない。チームで雑談することで自身の考えを相対化し、アイデアを見つけやすくするSNだが、(アプリの通知は)いずれの3つを阻害している」

 五十嵐氏も「昔は阻害されることはなかった。30年前はメールを使わずチャットもなかった。3つ(の大規模脳ネットワーク)をコントロールすることができたのだろう。だが、現在は(アプリの)通知が来るため、なかなか集中できない。便利な反面、3つの構造に立ち返るべきかも。ITツールベンダーとして難しいが、われわれ自身も学ばなければならない」と感想を述べた。

法政大学 経営学部・准教授 商学博士 永山晋氏(写真左)
法政大学 経営学部・准教授 商学博士 永山晋氏(写真左)

 ファシリテーターの上原氏が「デジタルデバイド(情報格差)も今回の調査で浮き彫りになり、ITツールを活用する若者も時間外対応といった阻害要因が明確になった。どのような解決法があるだろうか」と尋ねたところ永山氏はこう答えた。

 「デジタルデバイドを埋め方は難しく、今すぐアイデは出ない。ただ、デバイド(格差)に関しては面白い話があり、年齢に応じて得るべき知識が異なる。知識を『深さ』と『広さ』に当てはめた場合、世代に応じて『深さ』がクリエイティビティにつながるのは若手だけ。シニア層は知識があっても活用しづらい。他方で幅広い知識はシニア層の活用範囲が広まるという研究結果がある。まとめるとシニアと若手がチームとして活動し、(ITツール活用に対する)デバイドがあることは組織に対してマイナスだ」

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