MM総研は1月27日、国内におけるRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の利用動向を調査した結果を発表した。国内で利用される主要17製品を対象に導入状況や浸透率、満足度などを分析した。年商50億円以上の国内企業(全業種の情報システム部門、企画部門担当者)を対象にオンラインでアンケートを実施。実施期間は2019年11月5~11日で、1021件の有効回答を得た。
今回、MM総研では導入企業内でRPAがどの程度広く使われているかを測るため、新たに「浸透率」という指標を作成。RPAを活用している部門数、PC台数、従業員数などをもとに算出される。従来指標の「導入率」(導入社数あるいは金額シェアをもとに算出)に加え、企業内でのRPAの展開状況を測る浸透率で現状をより適正に反映させたとしている。
調査結果によると、2019年11月の時点でRPAの導入率は38%だった。2018年6月時点では22%であり、約1年半で16ポイントの増加だった。導入率を企業規模別に見ると、年商1000億円以上の大企業は51%、年商50億円以上から1000億円未満の中堅中小企業は25%だった。
業種別に見ると、金融が59%で最も高かったという。ただ、金融以外の業種でも普及率は高く、業種に関わらず導入が進んでいるとしている。前回調査(2019年1月)に比べると、学校・医療福祉と流通の導入率が特に大きく伸長した。
RPA導入率:社数ベース。回答企業全体(n=1021)を分母、RPAを「利用している」と回答した企業を分子として計算(出典:MM総研、以下同)
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先述の通り、大企業は既に導入率が過半を超えた。大手企業におけるRPAツールの浸透率を見ると、「UiPath」が45%で最も高かった。「ユーザー、パートナー企業へのサポートとAI(人工知能)などの組み合わせや運用管理といったエンドツーエンドのソリューションが奏功している」と分析する。次いで「BizRobo!」が40%、「WinActor」が38%だった。
導入社数で比較すると、1位はWinActorで2位がBizRobo!、3位はUiPathだったとしている。
RPAの導入企業は、2つ以上の製品を利用している割合が約半数を占めた。その理由としては、「比較検討・テスト」が36%で最多だった。「この層は2018年度に導入した割合が高く、ライセンス切れとなる2019~2020度内に結論を出す可能性が高い」とMM総研は分析。導入企業のうち、既にRPAの切り替えを経験している企業は1割に満たない。切り替えを準備・検討している企業は約3割程度という。
また、「互換性・使い分け」(27%)、「安定稼働・リスク分散」(17%)を理由に挙げるなど、既に比較検討を終えて複数利用を継続する層も見られるとしている。
RPA導入企業に今後の利用方針も聞いている。「利用拡大に前向き」が80%で大多数を占め、利用中止などの後ろ向きな企業は2%にとどまった。これは前回調査と同様の傾向で、導入企業の業務自動化に対する期待は依然として高いようだ。RPAの高度化や適用範囲の拡大など、より深く使いこなすニーズが顕在化しており、特に大手企業でその傾向が強いという。
利用の拡大に当たっては、人材、予算・コスト、組織間連携、業務プロセスなどさまざまな課題が存在するとし、現時点ではRPA人材の不足が大きくなっている。
「わからない」などの回答を除いた構成比
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この調査では、AIの導入率についても調べている。AIの導入率は2019年11月時点で36%。26%だった約1年半(2018年6月)から10ポイントの増加だった。既にRPAを導入している企業ではAIの導入率が77%に達するが、RPA導入を準備・検討中の企業では12%、RPA未導入の企業では9%にとどまった。「RPAを活用する企業とそうではない企業では、AIをはじめとするデジタル活用の差が顕著に表れる結果となった」とMM総研は分析する。
その上で、RPA導入企業では、AI-OCRやチャットボットをはじめ、さらなる業務自動化に向けた追加投資も始まっていると指摘。実際に、導入企業の約半数は、RPA以外のシステムも新規で導入したという。
AI導入率、社数ベース。回答企業全体(n=1021)を分母、PoCも含みAIを「利用している」と回答した企業を分子として計算
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