衣服生産の支援を手掛けるシタテルは2月3日、事業戦略発表会を開催。代表取締役CEO(最高経営責任者)の河野秀和氏が「『テクノロジーによる仕組みのアップデート』『事業の高効率化による高収益体制の強化』『新マーケットとサステナビリティーのモメンタム形成』の3つをアクションプランとして実行していく」と表明した。
シタテル 代表取締役CEOの河野秀和氏
シタテルは2016年、衣服の生産プロセスを総合的に支援する「衣服生産プラットフォーム」の提供を開始。同サービスはアパレル事業者の他、ユニフォームの製造を希望する非アパレル事業者やこれからブランドを立ち上げようとしている人々も利用している。2019年12月時点で、登録クライアントは約1万5000社、縫製工場・サプライヤーは約900社に上る。業績は順調に推移しており、2016年以降は前年比200%以上のペースで成長しているという。
河野氏が表明したアクションプランの具体策は、次の通りだ。
クラウドでコミュニケーションを円滑化
「テクノロジーによる仕組みのアップデート」では、アパレル事業者に向けて「sitateru CLOUD」を提供する。これまでは、同社の営業担当者が生地の手配から工場・サプライヤーの割り当て、生産管理までを支援してきた。今後はこの体制に加えて、sitateru CLOUDにより、アパレル事業者がシタテルの連携工場・サプライヤーと直接取引できるようにする。これにより、原価の低減やコミュニケーションの円滑化、情報の一元管理が期待される。加えて、アパレル事業者が既に取引のある工場とやりとりする際も同サービスを利用できる。シタテルは現在、同サービスのベータ版を一部のブランドに提供しており、本提供を目指しているとのことだ。
「和菓子屋」「きれいめ」などでカスタマイズ
「事業の高効率化による高収益体制の強化」としては、非アパレル事業者がユニフォームをカスタマイズできるサービス「sitateru CSTM(カスタム)」の提供を1月に開始した。これまで事業者はシタテルの営業担当者と打ち合わせを行い、デザイナーにデザインを依頼していた。一方sitateru CSTMでは、事業者が該当する業種や希望するテイストからユニフォームを選択し、複数の選択肢から色や柄を選ぶ。コーディネート一式に加え、Tシャツやエプロンなど単品のアイテムもカスタマイズの上、注文することができる。同サービスには、シタテルがこれまで蓄積してきた知見やデザインを活用。現時点は非アパレル事業者を対象としているが、アパレル事業者や一般の人々にも「マスカスタマイゼーション(個別大量生産)」という手法を展開していくことを目指しているという。
「作ったけど売れない」を生み出さない
「新マーケットとサステナビリティーのモメンタム形成」では、デジタルネイティブブランド(DNB)向けのサービス「sitateru SPEC」の提供を2019年12月に開始した。DNBの特徴は、D2C(Direct to Consumer)で商品を販売したり、購入者の数ではなく思い入れの深さを重視したりすることがあるという。また消費者も数多くのブランドから選ぶのではなく、自分がそのブランドのファンであると認識した上で商品を買う。例えば、ゲーム会社が自社のキャラクターとファンのコミュニケーション手段として、そのキャラクターのTシャツを販売することなどが考えられる。
こういった企業は知的財産や熱狂的なファンを抱えているが、アパレル事業に詳しいわけではなく、製品の生産・販売には業界知識の不足や過剰在庫のリスクなどの課題があった。そこでsitateru SPECでは、売れた分だけを製造・販売する仕組みを提供。具体的には、ブランド側が商品のサンプルをSPEC上に掲載。最低枚数(30枚程度)に達したら、生産・販売を行う。そしてシタテルは、ライセンスフィーとして売り上げの20%前後をブランドに支払う。全国一律料金での個別配送や、販売時のクレジット決済機能・海外販売機能の提供も行っている。
sitateru SPECの仕組み
河野氏は「シタテルでは最適なサービスの提供により、顧客が目的をスムーズに実行できるようにしていく。これからは単に事業者と生産者をつなぐ『二面サービス』から、消費者がサービスプロバイダーとしてダイレクトな取引を行うシーンなどにも対応する『多面サービス』を提供していく」と今後の自社の在り方について語った。