世界のトップイノベーターにインタビューを行う「CxOTalk」シリーズで、世界保健機構(WHO)の最高情報責任者(CIO)Bernardo Mariano氏に、デジタルトランスフォーメーションと医療の関係について話を聞いた。
興味深かった話題の1つはデータの所有権や、倫理面での配慮についての議論だった。
FacebookやGoogle、Amazonなどをはじめとする多くの大手インターネット企業が、ユーザーの個人情報を収集して集約し、共有し、収益化していることは周知の事実だ。そのデータ集約の規模は、人々の生活に与える影響の大きさと相まって、データプライバシー、データの所有権、消費者の法的保護などの分野でさまざまな問題を提起している。
WHOの役割には、医療情報に関するそれらの問題に関して、リーダーシップを発揮することも含まれている。Bernardo氏がインタビューで述べたとおり、WHOの影響力や公の議論を主導する能力を考えれば、WHOが持っている観点には十分な注意を払う必要がある。
詳しい議論については動画で参照できる。また、完全な書き起こし原稿も参照できる。以下では、データの議論に関するMariano氏の発言を抜粋して紹介する。
データやデータの所有権に関する倫理面の課題にどう取り組むべきか
医療情報に関する国際的な規制を実現するためには、WHOの役割が鍵になります。欧州連合(EU)にはプライバシーを保護する一般データ保護規則(GDPR)があり、各国もそれぞれ国民のデータを保護するプライバシー保護法を持っています。
また例えば、クラウドプロバイダーにデータをクラウドに移すことを禁じる法律を導入する国も増えてきました。医療データや国のデータを国外に持ち出すことを規制で禁じている国も数多くあります。
このように、さまざまな利害や視点が出てきている一方で、機械学習や人工知能(AI)の力によって、一部の致命的な疾病の診断や治療の取り組みに、ビッグデータが利用されています。私たちは、プライバシーや倫理的な配慮と、データの共有によって世界の健康の増進し、それらの進歩を実現し、僻地であるためにほかの方法では対処が難しい疾病に関する取り組みを加速し、デジタル化によってプライマリーヘルスケアのレベルを引き上げることを両立したいと考えています。
それには、医療データの取り扱いに関する規制が鍵になります。このことは、加盟国によって5月に承認される予定の、私たちのグローバル戦略にも明記されています。このグローバルなデジタルヘルス戦略に194の加盟国の承認が得られれば、その成果の1つは、まさしく今お話しした問題を解決するための国際的な医療データ規制になるでしょう。