他の仕組みと比べてコストをどれだけ抑えられるか
以上が発表内容だが、筆者がこの新サービスに注目したのは、実現性の高い小売店舗向けレジレスソリューションだと感じたからだ。
この分野では、アメリカのAmazon.comなどが無人店舗を実現したり、NECも店舗内に設置したカメラや画像認識技術などを組み合わせることで、商品をレジに通さず決済可能なレジレス型の店舗を開発するなど、デジタル技術を駆使した新たな試みが盛んに行われている。その中で、今回のNECの新サービスの最大の注目点は、他の仕組みに比べてコストをかなり抑えられる可能性があるとみられることだ。
サービスのプロセスとしてポイントになるのは、来店客が自らのスマートフォンで購入したい商品のバーコードをスキャンする手間だと考えられるが、これは意外に自分がその商品を購入すると判断した行為として受け入れられるような気がする。
ただ、気がかりなのは、スキャンしないで決済をすり抜けようとする「万引き」行為や、スマートフォンの操作が苦手な年輩者にどう対処していくかだ。
こうした課題に対しては、NECも発表の中で「セキュリティ対策機能や利用者の利便性向上に向けたAIやARを活用した各種機能などを順次追加していく」としており、対処が進んでいくものと思われる。
NECは2020年度(2021年3月期)までの3カ年の中期経営計画「2020中期経営計画」において、生体認証やAI、IoTなどの先進技術を活用し、快適で心地よい顧客体験を生み出し続ける店舗運営を実現する「Smart Retail CX」というコンセプトのもと、その具体化に取り組んでいる。今回の新サービスの展開もその一環だ。
こうした小売店舗向けの具体的なサービスの場合、おそらく顧客企業との実証実験のようなアプローチが既に行われているだろう。正式に採用された際には、課題をクリアできたかどうか、さらには他のレジレスソリューションと比べてトータルコストをどれだけ抑えられるのか、ぜひ取材してみたい。