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アジャイル開発を加速させるローコード技術の衝撃

第5回:ローコード開発、実際どうなの?--導入企業の本音を聞く(2) - (page 2)

高橋嘉文、高橋遼平

2020-02-14 07:00

大成建設のシステム運用・開発を担う、大成情報システムの場合

 次に紹介するのは、GeneXusの導入でシステムの内製化を成功させた、大成建設グループのITシステム運用・開発会社、大成情報システムの事例になる。

 大成情報システムは、全国に広がる大成建設の本社・支店・作業所と大成建設グループ各社に対して、ITインフラストラクチャーから業務アプリケーションまで幅広いサービスを提供している。

システム開発の内製化を実現するためには、生産性が高く理解しやすいツールが必要

 要件定義などの上流工程を担当する人材を育てるためには、開発経験の有無が大きく影響する。大成情報システムは、社内リソースの事情からシステムの開発を協力会社に委託せざるを得ない状況だったが、人材育成の観点から内製化の必要性を痛感し、生産性が高く理解しやすいローコード開発ツールのGeneXusを採用した。その決め手は、他社アプリと自在に連携できる柔軟性と、スマートデバイスにも対応した先進性にある。

写真1

 大成情報システム 第一開発保守部のチームリーダーである松田豊道氏と松村貴樹氏、そしてITエンジニアの石丸裕紀氏と池田恭平氏に、GeneXusを活用した取り組みについて聞いた。

 内製化による「社内の人材育成」「ユーザーが要望するシステムの迅速な提供」「スマートデバイスを利用するシステムの構築」などの実現を目指し、2015年にアジャイル開発の研究とアプリケーション自動生成ツールの調査が始まった。

 松村氏を中心にさまざまなツールの調査収集を行い、最有力候補として残ったのがGeneXusだった。その理由として松村氏は以下の4点を挙げている。

  1. 現在と将来のさまざまなIT環境に対応可能であること
    • マルチプラットフォーム対応
    • 複数のデータベース、バージョンに対応
    • MicrosoftやOracleとの提携により、時代のトレンドに応じた言語/DBMSジェネレーターに迅速に対応
  2. 開発ツールの理解・習得のしやすさ
    • 選択した言語、DBMSに応じたソース、データベースを自動生成
    • コードを記述する場合には、JavaやC#の最大公約数的なコードで記述
    • 設定ベースで多くの実装が可能
  3. 自由度の高さ
    • 外部オブジェクトの呼び出し、既存データベースの取込・活用、APIオブジェクトの作成等などの自由度の高い開発が可能
  4. 開発コストの削減
    • 業務内容をGeneXusへ投入することで、データベースとプログラムの自動生成が可能
    • 一覧画面、登録画面、帳票など、用意された機能テンプレートを適用することでローコードによる量産開発が可能
    • ナレッジベースをもとに再構築が可能(TCOの削減)
生成された画面 生成された画面
※クリックすると拡大画像が見られます

 ツールの選定基準として重視したのは、限られた社員数でシステムの内製化を可能にする柔軟性と生産性だ。GeneXusはJavaなどの言語知識がなくてもツールに用意されている言語を覚えることで他社のアプリや多様なツールとも連携が可能なため、複雑なシステムにも対応できると期待された。

 2016年4月にGeneXusの導入を決め、さっそく5月から実用評価も兼ねて小さな業務システムの開発を始めた。案件として選定したのは、建設の現場で発生する個人事業主などへの支払調書を管理・発行するシステムだ。GeneXusの販売代理店であり豊富な開発実績とGeneXusの独自製品を持つウイングに常駐型の業務委任で協力を依頼し、学習しながら開発する方法を採用することで、内製化の布石を打ちつつ実施することとなった。

内製化を成功に導いた開発体制

 支払調書システムのプロジェクトチームには松村氏をリーダーとした大成情報システムから3人、ウイングからは技術支援として1人が参加した。GeneXusを利用するのは初めてだったため当初は苦労もあったが、すぐそばに使い方を聞くことができる技術者がいたことと、メールと電話によるGeneXusの技術支援サポートシステムを利用したことで、OJT形式の開発手法で技術習得ができたことは大きな成果だった。本来予定していたスクラッチ開発の見積りでは半年間かかるはずのシステムが、開発初案件にもかかわらず3.5カ月で完成。GeneXusの生産性を改めて体感することができた。

 また、ウイングが開発したシステム開発基盤「GeneXus SYSTEM-Template(現在の製品はG.RAD.E:グレード)」を利用したことで、基盤に載せた開発をすることができたことも成功した要因の一つだ。

 次に開発を手掛けたのは入退室管理システムだったが、こちらは来客やメンテナンス作業員、常勤・非常勤社員のカードを用いた入退室を管理するシステムで、iPadに非接触型カードリーダーをセットし入退場者の管理をアプリ経由で行うなど、経験が少ない技術者にはハードルが高い案件だった。しかし、大成情報システム社員とウイングをはじめとするパートナーとのチームにより、約6カ月・25人月で、90機能に及ぶシステムの完成とリリースを実現した。結果として、当初の開発見込みである35人月に比べ、生産性は30%向上した。

 また、2017年には、働き方改革の一環として大成建設でフリーアドレス化を実施するプロジェクトが立ち上がり、松田氏と池田氏を中心にシステム検討が開始された。その要件はフリーアドレスの座席予約にとどまらず、スケジュール管理との連携、基幹システムの人事情報データとの連携など、システム全体の在り方も検討課題となっていたことから、パッケージソフトの導入も検討された。しかし満足のいく機能を有する製品はなく、期間もリソースも限られていたため、GeneXusを活用する方針に落ち着いた。結果、Office365上のメールやスケジュール表とシームレスな連携を行うことができる座席表システムの開発をほぼ内製で実現した。

画像2
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 さらに、GeneXusをベースとした新しいプロジェクトでは、スクラムによるアジャイル開発で問題なくプロジェクトを進めていくことができたため、GeneXusがアジャイルによる開発プロセスにも有効であることを確認できたことは大きな成果といえる。

 これらの開発を通じて、石丸氏は「GeneXusを触り始めたばかりの頃は、講習のレベルまでは簡単に習得できても、その範囲を少しでも出ると分からなくなってしまうことが少なくなかった。しかし、開発現場にすぐに質問に答えてくれる技術者がいるのはとても心強く、おかげで3カ月程度でGeneXusの基本を習得することができた」と語る。石丸氏はその後もGeneXus担当としてキャリアを積み重ね、今では保守・改修などは自社内製で解決できるまでとなった。

 現在、大成情報システムには9人のGeneXus技術者が存在する。今後の展望や新たなチャレンジについて聞いた。

 「大成建設では、工事現場にiPadを配布している。GeneXusはiOSとAndroidの両アプリ開発に対応しているので、建築現場の情報共有にスマートデバイスの有効活用を考えている。また、社内に古いツールで開発されたレガシーシステムが散見されるため、それを少しずつ置き換えて、運用や改修がしやすいシステムに改善したい」

 大成情報システムは今後もGeneXusの柔軟性・生産性を活用し、内製化を推進していく。

高橋嘉文(たかはし・よしふみ)
1990年にキヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)に入社。IT部門で社内システム開発に従事。その後、外販ビジネス部門に転属し自社パッケージ製品の開発PMを担当。2004年にローコード開発プラットフォーム「Web Performer」のビジネスを立ち上げ、マーケティング責任者として現在に至る。
高橋遼平(たかはし・りょうへい)
ウイング 製品企画室 室長 執行役員
情報システム系大学を卒業後、2006年に入社。現在まで10年以上にわたり「GeneXus」関連業務を推進。GeneXusを利用した開発案件のプロジェクトマネージャー、システムアーキテクトなどを多く経験。また、内製化支援/教育/導入コンサルティングや製品企画開発も行っている。現在は、製品企画室として、G.RAD.E(GeneXus開発基盤)をはじめとする GeneXusソリューションサービスを企画・展開している。

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