感染症拡大に備えた働き方とビジネスコミュニケーションを考える

山本雅史

2020-02-14 07:00

 新型コロナウイルス(正式名称「COVID-19」)感染の広がりがいまだ止まらない。2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)に比べ、現在の日本は中国との人の往来が格段に増えており、中国を中心とした経済活動もアジア全域から、全世界的に広がっている。

 新型コロナウイルス自体の生態や症状などは、徐々に情報が出てきているが、2月24日からスペイン・バルセロナでの開催が予定されていた「MWC」が中止となり、日本国内でも多くの人が集まるイベントやカンファレンスの延期、中止が出始めるなど、新型コロナウイルスの影響が徐々に広がっている。日本国内は、まだ感染が爆発的に拡大する「パンデミック」の状態にはなっていないものの、それが起こり得るかどうかは、まだしばらく予断を許せないだろう(日本感染症学会は日本国内でヒト-ヒト感染が散発的に起こっていたとしてもおかしくない状況としている)。

 万一パンデミック状態になれば、今まで以上に企業活動や生活に大きな影響が出てくる。企業としては、そういった状況になっても活動の一切を停止することは難しいかもしれない。特に都心のオフィスワーカーは、通勤ラッシュやオフィスという同じ場所にたくさんの人が集まることを考えると、パンデミックになれば、自宅待機もしくはリモートワークという方針になると想定される。企業活動という意味では、オフィスワーカーは企業の一部であり、実際には工場業務や配送業務など現場で働いている人も多く、そこまでを含めた対応については悩ましい。

 ただ、パンデミックの中でも企業は、ITシステムを利用することでリモートでのコミュニケーションを密にし、企業活動を粛々と進めていくことになるだろう。メールやスマートフォンなど、さまざまなデジタルコミュニケーションツールが出てきているが、よりスマートで密なコミュニケーションが行えるツールとしては、チャットコミュニケーションツールがお勧めだ。

 メールなどが中心だと、頻繁にリプライが行き来し、非常に煩雑になる。また、複数の人とのコミュニケーションを考えると、CCやBCCなどで、同じメールをグループに送信するため、より分かりにくくなる。チャットコミュニケーションツールを使えば、同じようなメールを複数のユーザーに送信することなく、グループでのコミュケーションも時系列に並んでいるため、非常に分かりやすい。ツールによっては、チャットだけでなく、テレビ会議システム、ファイル共有などの機能を持つ。

 企業向けのチャットコミュニケーションツールとしては、Slack、Microsoft Teams、LINE WORKSなどが有名だ。Slackは、小規模なチームであれば無償で始められるプランもあり、中小企業であれば、有償だが最大15人までのテレビ会議が行える。Microsoft Teamsは、企業向けのOffice 365でさまざまなライセンスが付与されている。Office 365を使用しているなら、追加費用なしに、すぐにTeamsを利用することができる。Teamsには、Skpye for Business(旧Lync)や、ファイル共有のSharePointなどもあり、これらをTeamsから容易に利用できるようになっている。

Teamsには直近のアップデートでトランシーバーのようにコミュニケーションができる機能も追加されている
Teamsには直近のアップデートでトランシーバーのようにコミュニケーションができる機能も追加されている

 LINE WORKSは、多くのユーザーが利用しているLINEをビジネス向けにしたものだ。このため、多くのユーザーが個人的に利用しているLINEそのままの使い勝手のため、全く新たなチャットコミュニケーションツールを利用するためのトレーニングも必要ない。プライベートでLINEを使っているユーザーなら、シームレスにビジネス向けのLINE WORKSを使いこなすことができるだろう。

 こうしたチャットコミュニケーションツールは、万一のパンデミックだけではなく、今夏のオリンピック/パラリンピック時のリモートワークや働き方改革においても強力なツールとなるだろう。だが、企業全体で使うには、仮にパンデミックが発生したからといって、翌日からすぐにというのは無理がある。やはり、日頃からチャットコミュニケーションツールを使ったコミュニケーションに慣れていないと、どのように使いこなせばいいのか分からない。

 IT管理者にとって、チャットコミュニケーションツールのような仕組みの導入は大きなトラブルを心配しがちだが、事業継続の観点からも新たなシステムを導入する検討はしておいた方がいいだろう。

 パンデミックが実際に起こるかどうかは分からないが、中国への出張などが大幅に抑制され、日本国内でもビジネスへの影響が生じつつある以上、万一特定部署の従業員が感染すれば、その部署ごと自宅待機させるといったことがこれから起らないとは限らない。このような場合に備えて、まずは少人数でチャットコミュニケーションツールなど、リモートワークに必要なITツールをテストしておくことを考えたい。使い勝手がよければ、徐々に社内に広げていけばいい。

 新型コロナウイルスに限らず今後もさまざまな自然災害やテロなどの人為災害などが起こり得るため、企業としてはITの活用を含めたBCP(事業継続計画)の整備や見直しが必要になるだろう。

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