本記事は楽天証券が提供する「トウシル」の「TOP 3分でわかる!今日の投資戦略」からの転載です。
今日のポイント
- 米国株は強いが日経平均は上値重い
- 新型肺炎への「株式市場での恐怖」はピークアウトが近いと判断
- 米国でインフルエンザの死者が1万2000人を超える
これら3点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
米国株は強いが日経平均は上値重い
先週の日経平均株価は1週間で140円下がりの2万3687円となった。中国の武漢市で発生した新型肺炎が中国景気を悪化させ、日本の景気・企業業績にも悪影響を及ぼす懸念から戻り売り優勢の展開となった。
新型肺炎の感染者は2月16日には世界で6万9000人、死者は1669人に増加している。現時点までの数字から推定すると致死率は2~3%と考えられる。2014年に大流行したエボラ出血熱(致死率40~50%)、2002~2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群:致死率10%)に比べると、致死率は低いことが分かってきている。
日経平均日足:2019年10月1日~2020年2月14日

出所:楽天証券経済研究所
2019年10月以降の日経平均の動きを簡単に振り返る。10~12月は世界景気回復期待から日経平均の上昇が加速した。
1月に入り、米・イラン開戦の不安が高まり世界株安となる中、日経平均も売られた。ただし、米・イランともさらなる緊張の高まりを望まないことが分かると世界的に株が反発し、日経平均も反発した。ところが、1月後半から新型肺炎の不安から世界株安となり、日経平均は再度急落した。
2月の最初の週は世界的に株が反発し、日経平均も急反発した。新型肺炎の感染者・死者とも想定以上のピッチで拡大している。それでも欧米株式市場では早々と「新型肺炎の終息」を織り込む動きが始まっている可能性がある。
先週(2月10~14日)は、日経平均の上値が再び重くなった。欧米株式市場では、新型肺炎のマイナス影響を懸念した売りは減りつつあるが、日本の株式市場では新型肺炎を懸念した売りがまだ続いている模様だ。
日本は中国と地理的にも経済的にもつながりが深いので、新型肺炎による景気・企業業績へのマイナス影響が大きくなることが警戒されている。
日本へのマイナス影響として特に警戒されているのは以下2点である。
(1)日本の観光業への影響
中国からの団体旅行のキャンセルによって、1月から訪日外国人観光客の数が大きく減っている。外国人観光客の増加に支えられてきた日本の観光業に大きなダメージとなっている。株式市場では、いわゆるインバウンド関連株(訪日外国人観光客の消費で恩恵を受ける株)が売られている。
(2)日本の製造業への影響、特に自動車関連
春節休暇(1月24日~2月2日)明けの中国でいまだに人の行き来が厳しく制限され、操業を再開できない工場が多いことから中国とサプライチェーンでつながった世界中の製造業に悪影響が及ぶ懸念が強まっている。
特に日本の製造業、中でも自動車産業への影響は大きくなる可能性がある。