Gartner Summit

ガートナーのアナリスト4人が説く、CXプロジェクトを成功に導く方法

日川佳三

2020-02-20 06:00

 ガートナー ジャパンは2月13~14日、都内で「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジサミット2020」を開催した。初日のオープニング基調講演では4人のアナリストが登壇、「苦境を乗り切るカスタマー・エクスペリエンス・リーダーの心得」と題し、カスタマーエクスペリエンス(CX)のプロジェクトを成功に導く方法を指南した。

 「CXの取り組みは予測が難しく、船旅に似ている」――ガートナー ジャパンでシニアディレクター、アナリストを務める川辺謙介氏はこう指摘する。歴史を振り返ると、人類は成長するために航海し、海の不確実さに直面する。航海に出る際には、良い船や装備、意思決定、スキル、頼れる乗組員――などが必要になる。

 海の不確実さと同様に、CXの取り組みにおいても、成長を妨げる“嵐”がある。景気の不透明さといった外部圧力や、社内のリソース不足といった内部圧力だ。こうした内外の危険にどう対処すればよいのか。こうした緊張感のある苦境を、ガートナーは「ハイステークな状況」と呼んでいる。

ガートナー ジャパン シニアディレクター、アナリストの川辺謙介氏
ガートナー ジャパン シニアディレクター、アナリストの川辺謙介氏

 例えば、コスト削減の圧力によって予算が削られる状況、投資効果をうまく説明できずCFO(最高財務責任者)から承認が下りない状況、経営陣が音頭をとっても部下が協力しない状況、一緒に頑張ってきた仲間が突然協力しなくなる状況――などがある。

 苦境を乗り切る仲間が顧客なのだと川辺氏は指摘する。顧客は、よりよいCXを期待しているからだ。ガートナーの調査では、70%の顧客は、他社の製品に乗り換えようとしているなど流動的だ。こうした状況を受けて、86%の企業は今後2年の間にCXが競争の基準になると考えており、74%の企業は2020年にCXへの投資を増やすと言っている。

 では、具体的に、苦境を乗り切るためにCXの舵をどう切ればよいのか。講演の中盤では、米Gartnerのアナリスト3人が、顧客、テクノロジ、リーダーシップの3つの観点でCXを成功に導く方法を解説した。

顧客に耳を傾けて、何でも欲しがる顧客に応えよ

 「顧客は何でも欲しがる」と表現するのは、米Gartner ディスティングイッシュトバイスプレジデント、アナリストのDon Scheibenreif(ドン・シャイベンライフ)氏だ。何でも欲しがる“エブリシングカスタマー”は、アプリケーションやデバイスで全機能を簡単に使えることを求めるとともに、使いにくいユーザーインターフェース(UI)によって邪魔されたくないと考えている。

米Gartner ディスティングイッシュト バイスプレジデント、アナリストのDon Scheibenreif氏
米Gartner ディスティングイッシュト バイスプレジデント、アナリストのDon Scheibenreif氏

 「従来の顧客は理性的だった」とScheibenreif氏は指摘する。選択肢が限られていたので、サプライヤーからの供給を待ち、指示に従っていた。しかし、ここ数年で技術が変化し、テクノロジー企業の台頭によって選択肢が増えたことで、新たな方法でニーズを満たせるようになった。

 例えば、宅配便が到着するまでの時間は、最初は24日かかっていたが、これが24時間になり、今では2時間で到着するようになった。銀行口座の開設は、10日が1日へ、今では15分になった。住宅ローンの申請は、1カ月が1週間へ、今では8分になった。

 ガートナーの調査によると、75%の顧客は良好なCXを得たいと思っているが、実際には49%の顧客しか良好なCXを得られていない。こうした中で、エブリシングカスタマーに対応するためにすべきこととしてScheibenreif氏は、傾聴、デザイン、測定の3つを挙げる。

 まずは傾聴が大事だ。VoC(ボイス オブ カスタマー)取得、ジャーニー分析、ニーズ分析を優先する。VoCで全チャネルから顧客の声を収集し、顧客がどういうステップを踏むのか(カスタマジャーニー)を把握し、顧客分析によってターゲットを絞ったマーケティング施策を実施する。今後は顧客のように行動するロボットも増えるので、ロボットにも耳を傾けねばならない。

 デザインも大事だ。デザインは競争力の源泉であるため、社内にデザイン組織を配置するトレンドもある。例えば、米国のフォークリストメーカーであるCrown Equipmentは、社内のデザインチームに、芸術家と人類学者を採用した。こうして、フォークリフトオペレーターの疲労低減などに取り組んでいる。

 測定も重要だ。ダッシュボードで値を観測するだけでなく、CXの測定指標を作ることが大切だとScheibenreif氏は指摘する。例えば、Netflixは、CXの測定指標を利用してCXを改善している。例えば、「複数のコンテンツを一気にまとめて観る」といった顧客の習慣を分析し、これに合わせたCXを提供している。

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