日本は3月末を会計年度と定める企業が多いものの、「(共同記者会見を開催した)2月下旬になると桜も咲いて気分も高揚する方も少なくないが、(財務経理部門における3月は繁忙期のため)人材の取り合いが発生し、歓送迎会は欠席。新入社員以来、花見も出席していない」(鷲尾氏)と財務経理担当者共有の苦労を吐露。このような背景から財務経理部門のデジタル化に踏み切ったと語る。
セゾン情報システムズが目指すモダンファイナンスは、属人化を排除する「標準化」やトレーサビリティーを確保する「可視化」を通じて、「効率化」「ガバナンス強化」の同時達成を目標としている。決算タスクの可視化はExcelで管理しているが、四半期で702件の管理タスクをBlackLineのダッシュボードで可視化することで、体系的なタスク管理や照合額などを一目で分かるようにした。
鷲尾氏は「進捗管理が楽になった。タスクの親子管理も成立し、(他担当者への)引き継ぎや(別担当者による)レビューも容易だ」と改善を強調した。
紙&ハンコベースの承認プロセスもデジタル化することで、四半期で408件の決算チャンネルリスト承認押印数と月間175件の伝票承認捺印はゼロとなっている。項目の目視確認や数値照合を必要としていた承認科目業務も118件中62科目を自動化して効率化と信頼性の向上が実現できたという。
また、担当者間のメールに埋もれていた業務内容や紙データもクラウドに格納されるため、情報の一元管理は当然ながらもフェーズ1完了段階で年間6400枚相当の削減に成功。プロジェクト完了後は年間3万枚相当の削減が可能になると見込んでいる。
ブラックラインは今回、日本企業と初提携を結んだ。ブラックライン 代表取締役社長の古濱淑子氏は「日本市場に根付くには、国内企業との連携が重要。古くからデータのつなぎ合わせを手掛けるセゾン情報システムズとパートナーシップを結ぶことで、経理部門のデジタル化が推進する。また、経理を締めた後に監査法人の業務が発生するため、(決算業務を継続的に処理する)コンティニュアスアカウンティングで全体的な期間短縮が可能」と決算業務に携わる財務経理部門や監査法人の働き方改革にもつながると語った。
(左から)ブラックライン 代表取締役社長 古濱淑子氏、セゾン情報システムズ 代表取締役社長 内田和弘氏