ガートナー ジャパンは、日本企業におけるRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の推進状況に関する調査結果を発表した。現状のRPA導入は限定的な業務に限られ、全社導入への推進拡大には課題が多いと指摘している。
ガートナーによると、日本企業のRPA導入率は2019年8月時点で47.5%に達し、2018年から検証目的や一部業務に限定した採用から、現在は社内での適用範囲の拡大に向かいつつある。同社の「ハイプ・サイクル(テクノロジーやアプリケーションなどが時間の経過とともにどのように進化するかを視覚的に説明するガートナーの手法)」で現在のRPAは、「幻滅期(新しいテクノロジーやアプリケーションに対する市場の最初の期待の高まりがピークを超えて沈静化していく段階)の底」に向かっていると、分析している。
ガートナーの調査結果
2019年5月の時点でRPAを「利用中/利用予定」とする企業は、主に社内システムからのデータの抽出、データの転記や二次加工にRPAを用いており、業務システムのデータ更新作業や社外向けシステムに関連する作業は、障害発生時の影響を大きく受ける懸念からRPAの適用が進んでいなかった。
RPAの推進体制は「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」が67%で最も多く、「各部署の判断で個別に対応」(21%)、「ツールや研修は全社で標準化、推進は各部署が対応」(12%)が続く。同社では、日本企業のRPA導入は従来、IT部門を介さずRPAユーザーとなる非IT系部門が業務効率化のために自発的に行うパターンが多かったとする。そのため、「IT部門が取りまとめ、全社で推進体制を標準化」との回答率の高さは注目すべきものだとしている。
ガートナーの調査結果
また、RPAの開発体制で最も高いのは「IT部門が開発」の57%だった。「ユーザー部門が開発」は23%、「ユーザー部門が外部委託で開発」は20%だった。
ガートナーの調査結果
RPAの推進や開発の体制の状況についてRPA分野のリサーチを担当するアナリスト シニア ディレクターの阿部恵史氏は、「部門導入で一定の成果を得た段階から全社的な拡大を志向する段階へ移った企業が増えていることが考えられる」と分析する。
ただ、全社レベルで拡大するには、「ITガバナンスやIT統制の観点からRPAツールの技術的な機能評価、IT統制のプロセスや仕組みづくり、各種の標準化やガイドラインの策定が必要で、ユーザー部門が単独では進めるのが困難であり、IT部門の関与が必須」(阿部氏)という。
開発面でも当初のRPAは、ユーザー自身で開発できる手軽さがうたい売りだったが、実際には、ユーザーが業務などに関する処理フローの考え方を理解している必要があるなど、簡単ではなかったとしている。
阿部氏は、「RPAの適用範囲の拡大は、現場レベルでの業務の可視化や効率化だけでなく、働き方改革の下地づくりや、デジタルトランスフォーメーションに向けた一般社員のITリテラシーの向上といった効果につながることが期待される」とその意義を説明する。
加えて、「場当たり的に行えば技術的負債の顕在化・肥大化を招き、企業の機敏性とガバナンスが中長期的に低下する恐れがある。全社展開を主導するのが誰であれ、IT部門は自分たちにしか担えない役割を果たし、取り組みの成功に向けて積極的に関与していくべき」と助言している。