ERP(統合基幹業務システム)などのエンタープライズソフトウェアの「第三者保守サービス」をベンダーの半額で手掛ける米Rimini Streetが、日本で事業を順調に伸ばしている。その背景にどんな動きがあるのか。さらに、ERPを含めたDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた新たな提案があるという。同社の日本法人である日本リミニストリート日本支社長の脇阪順雄氏がその内容を語った(写真1)。
写真1.日本リミニストリート 日本支社長の脇阪順雄氏
全ての企業に問う「今、本当にIT投資すべき領域は?」
「今、本当にIT投資をしなければいけない領域はどこか。そう考えて当社へ相談に来られるお客さまが昨年(2019年)来、グッと増えている」――。脇阪氏に日本での事業が順調に伸びている理由を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。
このコメントは少し説明が必要だ。企業が今、IT投資すべき領域として悩んでいるのは、既存の基幹業務システムの刷新よりもDX領域を優先すべきではないかと考えているからだ。
なぜか。“攻め”のビジネスに直結するDX領域に素早く投資すれば競争力の強化を図ることができる。しかも基幹業務システムの刷新にかかる巨額の費用をDX領域に振り向ければ、さまざまなプロジェクトを遂行でき、相当の効果が期待できる。従って、基幹業務システムはしばらく現状のままで、できるだけコストをかけずに運用したい、という考えからだ。
これは非常に興味深い動きである。例えば、基幹業務システムの代表的なソフトウェアである「SAP ERP」については、SAPが最新版「S/4 HANA」への移行を促進している。だが、SAP ERPユーザーの中には、それよりもDX領域への投資を優先し、ERPの保守にRimini Streetのサービスを採用したところもある。脇阪氏によると、そうしたユーザーが「昨年来、グッと増えている」というのだ。
最近では、脇阪氏もユーザーから保守サービスについての相談を受けた際、「御社で今、本当にIT投資をしなければいけない領域はどこですか」と問いかけているそうだ。企業の間でこの問題意識は今、非常に高まっているという。
そこで同氏は、同社が考える「ERPを含めたDX推進策」を提案し始めた。その内容を示したのが、図1である。
図1.Rimini Streetが考える「ERPを含めたDX推進策」(出典:日本リミニストリート)
ポイントは、変化の早い「工場のイノベーション」「お客さまとエンゲージメント」「働き方改革」といった最新のデジタル技術を駆使すべき領域に優先して投資し、変化の遅いERPについては変化の早い領域としっかりデータ連携させた上で、次に投資できるときまで現状を維持する、といった点にある。
脇阪氏はさらに、「現在使われているERPは、この図において下側だけでなく上側の領域まで取り込んで膨れ上がった状態になってしまっているものが少なくない。これらの機能を分けて変化に素早く対応できるようにし、ERPそのものをシンプルにすることが次のERPへの刷新にもつながる」と説いた。
実は、このERPを含めたDX推進策こそが、経済産業省が2018年9月に発表したDXレポートに記されている「2025年の崖」をクリアするための対策でもあるのだ。
脇阪氏によるERPを含めたDX推進策の話が非常に興味深かったので、ここまでその内容を記してきたが、Rimini Streetおよび日本リミニストリートは、まだまだ広く知られている会社ではないので、その事業内容も合わせて、次項で紹介しておこう。