「プログラミングを書く能力を問う」というユニークな実技検定が2019年12月に実施された。プログラミングに関する「知識」のレベルを測るのではなく、アルゴリズムを設計したり、コードを記述したりすることで実践的なプログラミングスキルを評価する。
この検定試験を実施するのは、競技プログラミングコンテストサイトを運営するAtCoder。IT人材のプログラミングスキルを測る基準を作ることで、IT技術者の不足を解消したり、活躍の機会を創出したりする狙いがある。

AtCoder 代表取締役の高橋直大氏
同社のコンテストサイトには、国内に約8万人、海外に約6万人の計約14万人の競技者が登録している。米国のTopcoder、ロシアのCodeforcesと並び、世界のトップ3に入る規模という。代表取締役の高橋直大氏をはじめ、競技プログラミングで活躍するトッププログラマーが多く所属する。
競技プログラミングでは、問題を解くまでの時間、解いた問題数、得点を競い合う。プログラミング言語に関する知識ではなく、問題を早く正確に解くためのアルゴリズムを競うコンテストという。高橋氏らが作成する問題はクオリティーが高く、世界中のトッププログラマーから大きな支持を受けているという。問題作成能力の高さが同社の強みの一つとなっている。
AtCoderでの競技プログラミングの大まかな流れは次の通りだ。
- インターネット上で問題が複数出題される
- 解く問題を選び、問題の要求を満たすアルゴリズムを考えプログラムを作成する
- 指定されたウェブサイトにソースコードを提出すると、問題文の要求を満たすかが自動的に採点される。正解であれば問題に応じた点数が獲得できる
- 解けた問題数や点数、解くまでにかかった時間などで順位付けが行われる
- コンテストの結果により、実力評価であるレーティングが変動する
コンテストで実績を積むことで、参加者のプログラミング能力を示すランクが与えられる。AtCoderは、競技プログラミングを通じて「世界で戦える一流の高度IT人材育成基盤」「プログラミング能力を証明する認証機関」としての役割を担おうとしている。
また、コンテスト以外にもAtCoderJobsというレーティングを活用した人材採用サービスや、コンテストを通じて企業の事業課題を解決するビジネスソリューション事業も展開している。
前述した検定試験では、プログラミング能力を5段階(エントリー、初級、中級、上級、エキスパート)で評価した。第1回の検定では、458人が受験。AtCoderのコンテストに参加したことのない一般受験者が全体の約3割を占めた。最も多かったのは初級の33%、全体の半数を超える52%がエントリー・初級ランクだった。全体の14%がエキスパートのランクを獲得し、38人が満点のスコアだったという。
金融・人材・小売・ITなど幅広い業界の企業・団体が参加した。高いプログラミングスキルを持つ高度IT人材の確保に乗り出している様子がうかがえる。第2回の検定試験は4月に開催を予定している。