NECは、5G(第5世代移動通信システム)とBeyond 5G(5Gの次の世代の無線通信システム)時代における無線通信データの大容量化に向けて、10Gbpsの屋外無線伝送実験に成功したという。実験では、D帯(130〜174.8GHz)に対応した周波数変換器(RF IC)と、同デバイスを搭載した屋外無線装置を開発・使用した。
実験に使用した機器類(出典:NEC)
無線での大容量伝送には、無線帯域幅の拡大や変調多値数の増加が必須だという。超小型マイクロ波通信システム「パソリンク」では現在、数GHz〜数十GHzの周波数帯域を用いているが、大容量化に向けてより帯域幅が広いD帯が注目されている。NECはD帯で動作し、増幅器や周波数変換回路などの複数機能を持つRF ICを開発。RF ICを石英基板上にフリップチップ実装するRFモジュールも併せて開発した。フリップチップ実装とは、実装基板上にチップを実装する方法の1つ。
実験では、RF ICを用いたモジュールと変復調部が一体となった試作装置を用いて、D帯という高い周波数帯で10GbpsのFDD(周波数分割複信)により双方向屋外無線伝送実験に成功した。さらに実使用環境を想定して4カ月以上にわたり、約1kmのリンク距離で無線伝搬特性の実証実験を実施。NECでは実験を通して得られたデータを基に、ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)勧告による降雨と通信稼働率(Availability)の関係式をD帯まで拡張するための検討を進める。
NECは今後、今回開発した技術をパソリンクに適用し、大容量化が求められるモバイルバックホール・フロントホール回線での利用を目指していく。