『ひとり情シス 虎ノ巻』(日経BP社)の著書で有名なペンネーム「成瀬雅光」さんこと黒田光洋さんに、今回の感染拡大の中の緊急対応についてお聞きしました。今回が最終回になります。1本目は「新型コロナ感染が拡大している今、ひとり情シスが心掛けること(1)」、2本目は「新型コロナ感染が拡大している今、ひとり情シスとリモートワーク(2)」になります。ご関心ありましたらご参照ください。
ただし、この内容は必ずしも全ての会社に当てはまるものではありません。環境の違いによる実効性も会社により異なります。あくまでも、参考情報としてご確認いただけたら幸いです。また、質問も受け付けており、可能な範囲で対応します。お困りごとがありましたら、最後のリンクに入力してください。また、この記事にないひとり情シスに役立つことなどありましたら、ぜひインプットいただけると助かります。
デルの清水博氏(左)とひとり情シスの黒田光洋氏
Q10.現役ひとり情シスの黒田さんが今回の緊急時に行動する上で、自戒することは何ですか?
A10.ちまたではデジタルトランスフォーメーション(DX)の言葉をたびたび耳にしますが、緊急時は、まさにさまざまなことをデジタル化、ロジカル化しておくべだったと痛感するものです。また、トラブルが拡大する事象も似たようなことです。何でもそうですが、慣れが生じると思わぬことが起きる可能性があります。しかし、緊急事態だからこそ、推進できることもあります。自身の成長も同じです。今回の緊急対応で自戒としてメモをしたことは以下になります。会社の状況にも異なりますが、参考になればと考えます。
- 社内で守られていたものを社外に持ち出すリスクを再認識。無理すると痛い目に遭う
- 利便性とセキュリティはトレードオフ。無理すると事故を起こす
- 今回も将来の練習だと思って、いろいろなクレームに耳を積極的に傾ける
- 上手くやるにはIT側だけでなく、管理職や社員、トップ、就業規則などのルールとの連携を再確認
- 今回上手くできない場合は、未来の災害時も同じように上手くいかないと思え
- 社内システムを情シスがいかに快適にしているかを分かってもらうチャンス
- どんなトラブルにも今後の飛躍のヒントや可能性がある
- 会社のシステムを守ることだけではなく、感染リスクを減らすことはITではできない
- デジタル化しておけばよかったことを克明にメモして、経営層と振り返る資料を作成
- 在宅勤務(自宅で快適)とテレワーク(どこででもできる)の本質を探るきっかけにする
Q11.仕事に没頭してしまって在宅勤務の切り上げが難しいことや、毎日の通勤がないので運動不足になってしまうことがあると思います。対策や気分転換の方法はありますか?
A11.まず、自宅であっても仕事のときは部屋着から着替えるべきです。スーツを着る必要はないと思いますが、人によってはノリの効いたワイシャツを着るとやる気が出るなど、ちゃんと着替えることのメリットは大きいです。何より、何かあってもすぐに外出できます。緊急時では、ネットワーク障害によって自宅で仕事ができなくなることがとても多いです。そのため、着替えていると、仕事と家のこと、気分転換の切り替えが効率良くできます。これこそが在宅勤務のメリットなのではないでしょうか。
問題は、在宅だと外部からの刺激が少ないせいか、気が付くと何時間も連続で作業していることもあることです。目覚まし時計やタイマーを使って気付かせてもらえる仕組みを自身でセットしてもよいと思います。
Q12.今回の緊急時の対応になると、ひとり情シスの方は忙殺されると思います。勤務形態について注意することは何かありますか?
A12.忙しくなってしまうのは分かるのですが、このようなときだからこそ、サービス残業や長時間労働を自己チェックする必要があります。従業員100人以下の企業が創業してすぐの時期に、私も緊急対応したことがありました。その当時は、以下の考え方と判断基準をベースに対応しました。
- 労働時間をチェックする方法を考える。在宅に適した柔軟な勤務システムが必要
- 勤務時間は参考程度。成果を管理できるシステムへの基本方針の変更が必要
- 期間限定なら無理に在宅せず、休暇や年休取得を促進する選択肢も検討する
- 性格や資質的に在宅勤務ができない人に無理をさせても生産性が上がらない。事故のリスクが高まる
- 途中から出社して勤務するときの扱いを考慮する
- 在宅でサボる人は会社でもサボる。成果がちゃんと見えていれば分かるはずの原点に戻る
- 自己管理ができる人は勤務管理も成果確認も不要。基本、そこまで狙うべき
- そもそも在宅勤務に向かない人までフォローできるIT環境を作ろうとすること自体に無理がある