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アジャイル開発を加速させるローコード技術の衝撃

第6回:ローコード開発、実際どうなの?--導入企業の本音を聞く(3) - (page 2)

贄良則、茎田浩明

2020-03-10 07:00

小型ユニバーサルジョイントの専門メーカー、協和工業の場合

 次に紹介するのは、「ユニケージ開発手法」を導入し業務の効率化・IT化を進めている協和工業の事例になる。

 協和工業は独自の工法「冷間鍛造」により高機能・多機能部品を生産しているユニバーサルジョイント専門メーカーだ。同社は「リードタイムの短縮」「品質保証」「コスト改革」を追求しており、そのいわゆる「カイゼン活動」は「NKS(New Kyowa System)」と呼ばれ、社員一丸となって取り組んでいる。

 活動を行う中でNKSの推進にはIT化が必要だと考え、同社はパッケージシステムを導入した。特定の業務が効率化された一方、システムに業務を合わせる必要があり、逆にNKSの推進を阻害する結果にもなっていた。そのような経過により社内からは「既存のパッケージシステムに改良を加えたい」「設備の稼働状況や生産実績をリアルタイムで可視化したい」という要望が挙がっていたが、費用も時間もかかるので諦めたことも多く、「システムに対する要望を言っても実現しないから」と徐々に現場からの意見も出にくくなっていた。

協和工業が抱えていた課題

  • 業務改善を行いたいが、既存パッケージシステムに業務を合わせる必要があり、改善が阻害される
  • 既存パッケージシステムの改良に、費用および時間がかかり過ぎる
  • 設備の稼働状況や生産実績の把握ができていない

 そんな中、愛知のモノづくり団体のセミナーで出会ったのが「USP研究所」が提供する、UNIXの基本だけを使ったシンプルな開発テクノロジー「ユニケージ開発手法」だった。

ユニケージ開発手法のイメージ図 ユニケージ開発手法のイメージ図
※クリックすると拡大画像が見られます

 「ユニケージ開発手法」は柔軟な開発に長けており、そのことから現場との対話を重視しながら開発することができるという特徴がある。従来のウォーターフォール型の要件定義では、業務の継続的な改善についていけない。本連載の「第1回:『アジャイル』と『自動化技術』の限界」では、要件定義は「ユーザーとともに創案する作業」とあるが、協和工業が「ユニケージ開発手法」を採用した理由もそこにある。ユーザーとエンジニアで合宿を行い、課題の共有・提案を行うなど、NKSにエンジニアも積極的に参画し、一体となって効率化およびIT化を進めた。

 結果、協和工業が抱える課題に対し、下記を達成した。

  • IoTによる設備稼働状況・生産実績の取得、リアルタイムでの進捗の可視化を実現
  • 既存パッケージシステムに足りない機能や、使用するのに手間がかかっている機能を支援するシステムを作成。必要な情報を抽出することで確認や問い合わせの手間を大幅に削減
  • Excelを使った既存業務の補助システムを作成。日々の生産計画をExcelで行っていたが、システム側である程度のデータを自動で作成できるようになった。それを土台にユーザーが計画を立てることで、工数を半減することに成功
システム側で作成したデータをExcelに反映 システム側で作成したデータをExcelに反映
※クリックすると拡大画像が見られます

 「ユニケージ開発手法のイメージ図」にあるように、ユニケージ開発手法は「やすい」「はやい」「やわらかい」「ながつづき」の4つが大きな特徴であり、今回その中で特に力を発揮したのは「やわらかい」だ。IoT機器、既存パッケージシステム、Excelといった異なる媒体をつなげるに当たり、インターフェースは大きな課題となる。ユニケージはデータをテキストで持ち、ファイルで整理しており、RDB(リレーショナルデータベース)やXLSX/CSV、USBシリアルなど、多種多様な入出力のデータをテキストに変換するコマンドを使用することで、ユニケージシステムに取り込むことができる。各データに合わせてファイルを整理することができるので、他機能への影響も少ない。新しい機器が加わるのであれば、新たに変換するコマンドを追加すればよい。

 協和工業は、次の課題として原価管理に取り組んでいる。原価管理に取り組むためには生産数、在庫数、労務費、設備償却費など、多種多様なデータを集計する必要がある。ユニケージの得意分野だ。

 テキストデータを細分化して整理しているユニケージは、機能を部分的に切り取って、それをシステム化しやすい開発テクノロジーだ。従来はパッケージのカスタマイズが主だったが、ユニケージ開発手法はある機能に特化したピンポイントなシステムを提供することができる。必要な機能のみをユーザーに届けることが可能なユニケージ開発手法は、NKSにおける課題解決に今後もかかせない存在だ。

 事例紹介は今回でひとまず終わりとする。次回は、BlueMemeの松岡真功氏による「アジャイル時代のチームビルディング」と題した、アジャイル開発におけるチームビルディングで意思決定を加速する方法を取り上げる。大規模アジャイルについての視点をさらに拡げ、考えを深める手掛かりにしてほしい。

贄良則(にえ・よしのり)
大学卒業後、CSK(現SCSK)で技術者としてシステム開発およびネットワーク設計に携わる。その後、地元・沖縄に戻り、地理情報システムの研究に従事した後、2001年にジャスミンソフトを創業。現在まで代表取締役社長を勤める。一貫してエンタープライズアプリケーション開発に従事しており、2006年にWagbyを市場に投入する。現在もWagbyのコンセプトデザイン、アーキテクチャー設計を行う。2013年に超高速開発コミュニティ(現ローコード開発コミュニティ)の設立に主体的にかかわり、幹事を勤める。ブログ「ジャスミンソフト日記」で、IT ベンダーとユーザーの関係性はどうあるべきか、感じたことを発信している。
茎田浩明(くきた・ひろあき)
2014年にUSP研究所に入社。人事システムや生産管理システムの開発に携わる。

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