レノボ・エンタープライズ・ソリューションズは、2019年9月にエッジコンピューティング向けサーバー「ThinkSystem SE350」の国内販売をスタートさせた。現在、同システムが新たな提案の創出に貢献しているという。
ThinkSystem SE350は、同社初のエッジコンピューティング向けサーバーだ。本体サイズは高さ43mm×幅209mm×奥行き376mm、重量は最大3.75kgで、1Uのラックサーバーの約半分のサイズに収めることができるほか、壁面に取り付けたり、棚に積み重ねたりといった利用もできる。また、使用時の周囲温度としては0~55度に対応し、最大30Gの耐衝撃性と同3Gの耐振動性を持つ。ちりやほこり、振動の多い環境でも利用できる堅牢性を実現している。「Lenovo XClarity Controller」による高い管理性のほか、有線接続やセキュリティで保護されたWi-FiおよびLTEなど、多数の接続環境オプションを利用できる点も特徴であり、今後は第5世代移動体通信システム(5G)にも対応する予定だ。

ThinkSystem SE350
CPUには、最大16コアのインテルXeon D-2100プロセッサーを採用する。メモリーは最大256GB、SSDは最大16TBまで搭載できるほか、NVIDIA T4 GPUの搭載をサポートしており、エッジ環境における人工知能(AI)の活用、画像や音声の処理にも対応する。「Microsoft Azure Stack HCI」および「VMware vSAN Ready Node」の認定も受けており、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)としても利用可能だ。今後はNutanixへの対応やファンレスモデルの追加も予定され、設置環境がさらに広がるとしている。
Jon Robottom社長は、「ThinkSystem SE350は、想定以上の勢いで導入が進んでおり、さまざまな用途に広がっている。レノボにとっても新たな商談機会が生まれている」と語る。また、技術営業本部の廣川直哉本部長も、「製品の発表以来、顧客や販売パートナー、ソリューションパートナーなど幅広い分野から多くの問い合わせがある。製造業の顧客を中心に実証実験がスタートしており、いよいよ本格導入を検討する段階に入っている」とする。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのJon Robottom社長
同社では、ThinkSystem SE350を活用した幾つかの実証実験の事例を示している。
製造業の場合、フォークリフトの車載コンピューターや工場の生産ラインなどに設置されるカメラなどから発信される映像データを分析し、生産現場の効率化や改善などに活用するケースがあるという。これらは、IoTによる生産現場革新の事例だ。
物流では、配送センターにおける業務プロセスの改善を目的として、音声認識技術を活用すべくThinkSystem SE350を導入しているという。この事例では、配送センターのオペレーターに海外の人材を活用しており、音声認識技術によって異なる言語でも理解できるようにし、多くの人材が作業を行える環境を実現している。音声認識技術の活用により、作業の指示や報告、問い合わせや応答といった場面で双方向会話ができるという。
また、アイネットとの協業で進めるドローンによる4K映像のAI分析ソリューションでは、ドローンで撮影した画像データをその場でリアルタイムに処理する必要があり、レノボのゲートウェイ製品「ThinkCentre M90n-1 Nano IoT」で収集したデータと、ドローンでの撮影データを組み合わせて、ThinkSystem SE350上でAIによる画像分析を行っている。
ThinkCentre M90n-1 Nano IoTは、エッジコンピューティングのゲートウェイとして開発された超小型のデバイス。本体幅はゴルフボール4個分ほどで、約0.55リットルのコンパクト設計を採用する。MIL規格に準拠し、限られたスペースへの設置や高温などの厳しい環境での利用にも適している。第8世代インテル Celeron プロセッサー 4205U(1.80GHz、2MB)を搭載し、デスクトップPC並みの性能を実現する。USB Type-Cやシリアルポートを備え、さまざまなデバイスを接続できる。
このため、エッジレイヤーで必要とされるデータの収集、前処理、分析、転送などの高負荷が求められる作業を行えるという。今後はThinkSystem SE350とThinkCentre M90n-1 Nano IoTを組み合わせた取り組みも増えそうだ。
その他に流通の事例では、ショッビングモールにおける店舗情報や映像、動線の分析で活用されたり、交通では移動中の車両にThinkSystem SE350を搭載して運転手や乗務員の表情から疲労度を判断し、警告を出したりといった利用の検討が始まっているという。