今回は、企業が電子契約を推進するにあたって、確認しておくべき法令について解説します。押さえておくべき法律は次の4つです。
知っておくべき4つの法令(出典:アドビ システムズ)
なお、電子契約の法的な拘束力が書類契約と同等か心配される方がいます。そもそも契約は、口頭であっても双方の合意があれば契約として成立します。電子契約でももちろん有効性は変わりありません。
IT書面一括法の例外に注意
IT書面一括法では、紙の書面交付が義務付けられていた文書を、電子メールや電子ファイルなどの電子的手段の交付でも認めることを定めていますが、この法律には例外があります。不動産購入の際、宅建業者が買い主に対して重要事項を書面で交付して説明する場合や、契約事項を書面で交付する場合などがこれに当たります。
電子契約を推進するにあたって、自社のビジネスに関わるものがIT書面一括法、e-文書法の対象に含まれるかどうかを必ず確認するようにしてください。
電子署名法の要件
電子署名法では、電子署名の有効性を決定づけるにあたって、次の2点を要件としています。
前回、電子契約の仕組みとして電子証明書を使う電子署名、IDやパスワードなどで認証する電子サインについて説明しました。
電子署名の場合は、事前に本人を認証した上で電子証明書を発行するため、その電子証明書を持っていることが本人性の確認になります。
改ざん有無の検証は、文書と電子証明書を組み合わせたデータを計算処理し、ユニークな値(ハッシュ値)を出し、契約者双方が同じハッシュ値をもっていることで、取り交わした文書データに改ざんがないことを担保します。
電子サインの場合は、電子メールの有効性の確認、あるいはログインID、パスワードによる本人確認などのプロセスが必要です。それだけでは本人確認として弱い場合、さらにユーザー登録画面などを用意して、氏名、住所、携帯電話番号などを入力させ、携帯電話にショートメッセージを送るなどの二段階認証プロセスが必要です。
企業間取引の場合は、登録されたメールアドレスが会社のドメインを使っているか、フリーのメールアドレスでないかなども注意してください。普段、業務のやり取りをしているメールアドレス以外での登録は認めないなどのルールが必要です。これは、紙の書類の契約でも相手の本人性を確認するのと同様のプロセスです。
電子ファイルの改ざんの有無は、ファイルへのアクセスログなどをもとに検証できるようにしておきます。
電子帳簿保存法で税務関係書類の電子化進む
企業は税法上、決算書類などの会計帳簿、税務証憑の5~7年間の保管が義務付けられています。電子帳簿保存法ではこれら税務関係書類の電子データでの保存を認めていますが、電子契約のように作成から保管まで一貫して電子的手段で処理される場合、電子取引の取引情報の保存要件として、電子ファイルの作成時から改ざんがされていないことを保証するための仕組みを用意する必要があります。その方法は、電子ファイルへのタイムスタンプ付与、あるいは電子ファイルの取り扱いに関する社内規程整備のいずれかです。