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電子契約の場合は、パソコンやスマートフォンから決裁できるため、非常にスムーズに処理が行われるようになります。また、ツールによっては承認フローのうち誰のところまで進んでいるのか、誰のところでどれくらいの期間止まっているのかというステータスもリアルタイムで把握できます。長時間承認が動かない場合は、リマインダーを出したりチャットなどで連絡できたりする機能を用意しているツールもあります。契約締結後にプロジェクトで問題が発生した場合でも、誰が決裁したかをすぐに確認できるのもメリットです。
取引先との合意が必要
紙の契約と比べたときの電子契約のデメリットはほとんどありません。強いて言うならば、電子契約についての理解を深める必要があることでしょうか。これは社内、取引先の双方に発生します。契約相手が電子契約のメリットや仕組みを理解していないと、処理がスムーズに進まないことがあります。
特に取引先とのやり取りについては、電子契約のシステムを提供するベンダーが直接説明するわけにはいきませんから、取引の担当者それぞれが説得することになります。担当者がそれぞれ電子契約の仕組み、やり方などを説明できる必要があります。
また、契約は双方の合意があって成立します。電子契約による締結についても取引先に合意してもらうべきでしょう。そのため、電子契約に切り替えたとしても、しばらくは紙の契約書との併用は想定しないといけません。
取引先が電子契約を受け入れない場合や、相手から印刷した書類が送付されてきたら応じざるを得ないでしょう。そのため紙の管理方法についてもきちんと社内規程を定めておく必要があります。
可能性としてありうるデメリットをもう一つあげるとすれば、トラブルが発生して訴訟になった場合における追加対応があります。
紙の契約書であればその書類をそのまま裁判所に提出すればいいのですが、電子契約の場合はプリントアウトして提出することになります。裁判官によっては、契約書にハンコがないがどうやって合意したのか、説明を求められることがあるでしょう。その場合は、電子契約における本人確認、改ざんがないことを証明するための資料を提出することになります。裁判になったときにワンステップ事務処理が増える可能性があり、デメリットであるといえるでしょう。しかし、電子契約が一般的になれば社会の理解も進み、述べたような状況は減っていくでしょう。
さて、次回は電子契約の導入事例について紹介します。取り上げるのは、人材派遣業界、不動産業界、金融業界です。
(第4回は5月中旬にて掲載予定)

- 浅井 孝夫
- アドビ システムズ 法務・政府渉外本部 本部長
- 2000年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程卒業。2001年弁護士登録後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて勤務。2007年韓国最大手の金・張法律事務所にて勤務。2008年米国カリフォルニア州立大学バークレー校ロースクール(LL.M)卒業後、米国ニューヨーク州にて弁護士登録。2009年北京滞在を経て法律事務所に復帰。2011年アドビ システムズに入社。

- 昇塚 淑子(しょうづか よしこ)
- アドビ システムズ デジタルメディア事業統括本部 営業戦略本部 ドキュメントクラウド戦略部 製品担当部長
- アドビ システムズにてドキュメントソリューションの市場開発を担当。2016年の日本市場における「Adobe Sign」の立ち上げ時より、製品担当としてAdobe Signの事業開発とマーケティングに従事。