デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む日本企業が増加しています。しかし、DXを成功させ、ビジネスを飛躍させている企業は少ないのが現状です。では、その原因はどこにあるのでしょうか。DXを成功に導くには何が必要なのでしょうか。経営者、マネージャー、そして現場の従業員は、どのようなマインドでDXと向き合えばよいのでしょうか。
DXのフレームワークを活用してほしい
KADOKAWA Connectedは、KADOKAWAグループのICTコンサルティングと働き方改革をデジタルの側面から支援する企業です。また、2020年2月25日からは、日本国内の企業・組織に対してDXの推進を支援するアドバイザリーサービスの提供も始めました。「日本の文化をベースに働く人々の生涯生産性」を、最高に高めるためのソリューションを提供する――。これがKADOKAWA Connectedのミッションです。
よく「なぜ、KADOKAWA Connectedがこのようなミッションを掲げ、日本企業のDX支援に注力しているのか」と聞かれます。この理由は、筆者がこれまでのキャリアで培ったDX推進のノウハウや知見を、「DXのフレームワーク」として日本企業の皆さんに幅広く活用してほしいと考えたからです。
筆者は1994年、エンジニアとしてINSエンジニアリング(現ドコモ・システムズ)からキャリアをスタートしました。以降、Compaq(現HPE)、EMC Corporation、ヴイエムウェア、楽天、マイクロソフト、アマゾン ウェブ サービス ジャパン、ドワンゴといった企業でクラウドや仮想技術の導入支援やICTサービスのインプリメンテーション、DXのコンサルティングを手がけてきました。
グローバル企業と日本企業、ITベンダーとユーザー企業、ベンチャーと大企業といった様々な立場でICTに携わってきたことで、さまざまな気づきがありました。これらの経験を通じて、日本企業が抱える課題と、課題克服のためには何をすべきかについて、筆者なりに考えがまとまりました。そこで第1回目は、なぜ日本企業の多くはDXが進まないのか。その背景を考察してみましょう。
DXは経営改革である
多くの米国企業はビジネスのデジタル化を推進しています。日本でも「DXに取り組む」と公言する企業は増加しています。しかし、残念ながらその取り組みは道半ばで止まっていることが少なくありません。典型的なのは実証実験(PoC)を繰り返し、そこから先に進めないケースでしょう。
なぜ、日本企業のDXが進まないのでしょうか。それは多くの企業において、DXの視座が十分な高さでないからです。
下の数式を見てください。これはDXの目的を数式で示したものです。
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「y」であるOutcome(成果)を得るためには、既存ビジネスの成果にプラスし、新規投資(x)をして新たな施策を実施する必要があります。このとき大切なのは、スピード感を持って「トライ&エラー」を繰り返し、サービスや品質を向上させることです。
私はこれを「高速回転運動係数」(a)と呼んでいます。Outcomeを増やすためには、この高速回転運動係数を上げなければなりません。そして、そこにデジタルが貢献するのです。つまり、トライ&エラーできる環境を構築し、スピード感を持って製品やサービスの品質改善に取り組めるようにした上で、投資である(x)を行えば、既存のビジネスのOutcome(b)に加えて、新しいビジネスのOutcomeが得られるのです。
残念ながら多くの日本企業はこの数式の本質を理解していません。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と同様のスピード感をもって経営に臨まなければ、グローバルで勝ち目はありません。それにもかかわらず、日本企業は経営のアーキテクチャを変えて、スピード経営にシフトする勇気を持てていないように見えます。
DXには「守りのDX」と「攻めのDX」があります。守りのDXとは、既存の業務プロセスを改善、効率化し、コストの最適化を図るものです。一方、攻めのDXとは、ビジネスモデルや顧客接点を抜本的に改革し、付加価値の高い製品やサービスの提供で、売上高のトップラインを高める施策です。守りのDXは「会社のファンダメンタルな部分を整える」ものであるのに対し、攻めのDXは「トップラインを狙っていく挑戦」です。DXで最大のOutcomeを得るためには、守りのDXを固めつつ、攻めのDXのプラットフォーム化をすることが必要になってきます。
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