松岡功の「今週の明言」

IIJと主要テレビ局が推進する動画配信事業は奏功するか

松岡功

2020-03-27 10:28

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、JOCDNの鈴木幸一 代表取締役会長と、ベリタステクノロジーズの高井隆太 常務執行役員の発言を紹介する。

「ネットによる動画配信は今後ますます大きな存在になっていく」
(JOCDN 鈴木幸一 代表取締役会長)

JOCDNの鈴木幸一 代表取締役会長
JOCDNの鈴木幸一 代表取締役会長

 インターネットイニシアティブ(IIJ)と主要テレビ局が出資する国内向け動画配信プラットフォーム事業者であるJOCDNは先頃、事業の概況について記者説明会を開いた。IIJ 代表取締役会長CEO(最高経営責任者)でJOCDN 代表取締役会長も務める鈴木氏の冒頭の発言はその会見で、動画配信事業のポテンシャルについて語ったものである。

 JOCDNは2016年12月、放送事業者や動画配信事業者向けに動画配信プラットフォームとして高品質でコストパフォーマンスに優れたCDN(コンテンツ配信網)を提供するために設立された。IIJおよびWOWOWを含む民放16社に続き、先頃NHKも出資し、オールジャパンで事業を推進する体制になったことを受けて今回の会見を開いた。会見の内容は関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言とともに、鈴木氏の動画配信事業に向けた積年の思いについて取り上げたい。

 同氏によると、IIJとしては1992年に設立した頃から、「いずれ、あらゆるメディアがインターネットを通じて配信されるようになる」と予見し、1995年に米国企業と組んで動画配信事業を手掛けたことがあるそうだ。ただ、当時はメディア側の関心を得られず、成果を出せなかったという。

 その後、米国を起点に動画配信市場が拡大し、「このままでは、日本は世界に大きく後れてしまうのではないか」と強い危機感を抱いた鈴木氏は、まず日本テレビ放送網との合弁会社としてJOCDNを設立。その後、主要テレビ局が出資する形となった。

 鈴木氏はJOCDN設立への思いを次のように語った。

 「動画配信といってもIIJはICT企業で、実際に動画のコンテンツを制作するのはテレビ局だ。各テレビ局においてもコンテンツ制作にはそれぞれの思惑がある。そうした立場や考え方の違いをディスカッションしながら調整して進めていかなければいけない。そういう意味では“同床異夢”かもしれないが、なんとかオールジャパンで一丸となって、世界をリードするような技術革新と事業展開を図っていきたい」

 同氏は会見で、「あれから25年経った今」という言葉を幾度か使った。25年というのは、先に述べたIIJとして初めて動画配信事業を手掛けた1995年から数えてのことだ。

 「同床異夢かもしれないが、オールジャパンで」――。鈴木氏らしい表現である。今度こそは、ぜひとも大きな成果を上げてほしいものである。

会見の様子。右側は、JOCDN代表取締役社長の篠崎俊一氏(日本テレビ放送網所属)
会見の様子。右側は、JOCDN代表取締役社長の篠崎俊一氏(日本テレビ放送網所属)

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