Googleは2月、Lookerの買収が完了したと発表した。ビジネスインテリジェンス（BI）業界では、2019年にSalesforceのTableau買収も起こっており、これをきっかけに市場のM&Aのトレンドについてわれわれの考えが向かうのは自然なことだろう。ほかにも最近では、5件以上のBI企業の買収があり、そのすべてが10週間以内という短い期間に発表されたものだった。
それらの案件はどれもニュースのヘッドラインを飾る規模のものだったが、実はそのほかにもかなりの数の買収が行われている。例えばデータガバナンス市場では、DataRobotがセルフサービスデータ準備サービスのパイオニアであるPaxataを買収した。Dell Technologies傘下のBoomiはデータ準備・データカタログの企業であるUnifi Softwareの買収を発表しており、Hitachi Vantara（同社の製品にはBI、データ統合スイートの「Pentaho」がある）がデータカタログ関連企業であるWaterline Dataを買収したのも最近のことだ。
10年間の再編の歴史
実際、この10年間を振り返ってみると、データアナリティクスの市場では、消えるはずなどないと考えられていた多くの企業が姿を消したり、買収などで形を変えたりしている。その中には、HadoopのパイオニアであるHortonworksやMapR、データウェアハウス企業のParAccel（同社の技術は「Amazon Redshift」の基礎になっている）、ビッグデータアナリティクス業界のパイオニアであるPlatforaやClearStory Data、モバイルBIのRoambi、NoSQL界のスターClardant、変更データキャプチャなどの企業Attunityなどもあった。
筆者はこの記事を書くにあたって、最近10年間に起きた筆者が知る限りのすべてのM&A取引を、分析用の小さなCSVファイルに構造化された形式でまとめた。このリストはおそらく完全なものではないだろうが、2011年以降の43件の買収事例をまとめたかなり網羅的なものだ。その後、このCSVファイルをMicrosoftの「Power BI」に取り込み、簡単な可視化処理を行って、技術分野ごとに過去10年間の買収のトレンドを調べてみた。
BI、データウェアハウス
筆者はBI企業にいた経験があるため、まずはBI企業の買収から分析作業を始めた。その結果、2014年から2020年までは、毎年コンスタントに買収が行われていたことが分かった。2019年と2020年の最初の2カ月では、すでに5件の買収が完了しているほか、その他の年には毎年1件から2件の買収が行われている。実はその前の10年間にも、短期間に大規模なBI企業買収が相次いだことがある。2006年から2008年の短い期間に、IBMはCognosを、OracleはHyperionを、SAPはBusinessObjectsを、MicrosoftはProClarityを買収した。BI企業の買収は比較的コンスタントに行われてきたように見えるが、実際にはその勢いには明確なピークが存在する。
一方で、データウェアハウスの分野では、この10年間はあまり買収案件がなく、ActianのParAccel買収と、Advance/Newhouseの1010data買収くらいのものだった。2010年前半頃までには、Vertica、Netezza、Greenplum、DATAllegroがそれぞれHP、IBM、EMC、Microsoftに取り込まれていることを考えると、買収対象になり得る企業がほとんど残されていなかったに違いない。しかし、これからの10年間には、何件かの買収が起こる可能性がある。
