ガートナー ジャパンは、「未来のアプリケーション像に関する2020年の展望」と題する提言を行った。企業が今後3~5年を見据えてアプリケーションの方向性を考える際には、「カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)」「開発者のペルソナ」「管理系ERP(統合基幹業務システム)機能のユーザー体験」「アーキテクチャー」の4つの領域を軸にすべきだとしている。
この展望の中で、アナリスト シニア ディレクターの飯島公彦氏は、企業のアプリケーションが大きな変革期を迎えているとし、「デジタルテクノロジーをビジネスに適用することに伴う顧客へのパワーシフトにより、アプリケーションは顧客へのエクスペリエンス提供を軸に据えた変革を迫られている」と解説する。
変革を具現化する際に最も重要なことの1つが「エクスペリエンス」だという。これは、個々の顧客の行動に対して期待される最善のサービスをその都度の状況に応じて判断し、最適なコミュニケーションを通じて提供することで実現されるという。未来のアプリケーションには、顧客の行動などに含まれる“コンテキスト”に応じて変化へ素早く対応できることが求められる。
飯島氏は、「これからは社内向けアプリケーションであっても顧客(=従業員)に提供するビジネス価値を考慮する必要がある。しかし、多くの企業はこの認識が希薄であり、スキル/リソース不足への対処も十分ではない」と指摘する。
同社が発表した展望とその解説は次の通り。
CX
2023年までに、デジタルテクノロジーによるCXの向上を目指す国内大企業の80%以上は、既存のアプリケーションやデータの在り方について抜本的な見直しを迫られる。
厳しいビジネス環境を切り抜けるための手段として、CXの向上を重視する企業が増えている。CX強化に向けた基本的な取り組みの多くでは、IT部門への当初の影響はそれほど大きくないだろうが、より良い体験を提供するためには、顧客からのフィードバックを反映した継続的な改善が必要になる。その一環として、複数システムのリアルタイムな連携や、既存ビジネスのプロセスの見直し、システム内のデータを組み合わせて集計、分析できる仕組みなどが求められる可能性がある。
だが、多くの企業アプリケーションは、当初の要件から外れた利用方法が想定されていない。こうした改善を実現しようにも、大規模な追加の開発や運用の変更が必要になるだけでなく、多くの時間と労力も要する。CXの向上を戦略的な課題としている企業では、改善案の早期実現を優先するあまり、場当たり的な対応を繰り返すことになり、システムがより複雑化し、変化に対応できる柔軟性がさらに低下する。その結果、CXの向上も限定的になってしまう可能性が高い。