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調査

法人向け5G市場は推進派と静観派に二分--IDCが見解

大河原克行

2020-03-30 11:45

 IT専門調査会社のIDC Japanは3月30日、法人向け5G(第5世代移動体通信システム)関連IT市場の予測を発表した。これによると、2026年の国内の同市場は、1436億円の市場規模に達すると予測。2020~2026年の年間平均成長率は198%と、高い伸びになると見ている。

法人向け5G関連IT市場の予測(出典:IDC Japan)
法人向け5G関連IT市場の予測(出典:IDC Japan)

 だが、同日オンラインでの記者会見に登壇したリサーチマネージャーの小野陽子氏は、「現時点で5Gに対するITサプライヤーは、推進派と静観派に二分される。推進派は産業構造を変えたいと考えており、課題解決や研究開発の志向が強い。一方で静観派は、5Gならではの用途がないこと、電波の届く範囲に課題があること、コストが高いことを指摘している。これらの層は5Gのことを詳しく理解しているがゆえに、冷静に弱点を把握している」と見解を説明した。

 加えて、「5Gの普及拡大には、5Gサービスの提供エリアの早期拡大やコストの低廉化、自律運転や遠隔操作の安全性に関する法制度の整備など、企業が5Gを利用する環境が整う必要があり、2021年時点での立ち上がりは鈍く、やや時間を要すると予測される。産業5Gの正念場はこれから。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展との相互作用で成長することになるだろう」との見方を示している。

5Gに対するITサプライヤーの反応は二分されるという(出典:IDC Japan)
5Gに対するITサプライヤーの反応は二分されるという(出典:IDC Japan)

 今回対象とする市場には、5Gの仕様を必要とし、5G活用を前提にしたIT(ネットワークを含む)システム構築のためのITインフラストラクチャーやソフトウェア、サービスに対するエンドユーザー支出を含めている。調査対象は、産業IoT機器の提供企業、産業IoT機器のユーザー企業、企業ネットワーク部門。なお、調査は2019年11月~2020年1月までを対象に実施しておリ、新型コロナウイルスの影響は反映されていない。

 現在、日本では5Gの商用サービスがスタートしており、企業などにおいては、個別に構築および運用ができる「ローカル5G」に対する関心が高まっているが、「多くの人の5Gに対するイメージは、高速大容量であるということ、ローカル5Gや高い周波数帯を利用していること、QoS(Quality of Service)保証やネットワークスライシングなどの認知度は低い」(小野氏)という。

 今回の調査では、企業への5Gの普及が無線LANや固定ブロードバンドといった既存のネットワークの置き換えではなく、新規のDX用途やスポット導入から始まることが明らかになったという。

 DXのユースケースでは、スタジアムなどのイベント会場や観光、ゲームといった没入感の高い新しい映像体験を提供するため新たに5Gを導入することが予想される。産業分野では、無線化による生産設備などのフレキシビリティーの向上、画像などによる設備の監視や予兆保全のほか、自動搬送車やロボット、ドローンなどの自律移動機器の活用、検査および点検、遠隔からの作業支援、3Dシミュレーションなどの現場のソリューションに対して、新規に5Gが導入されることが期待されるという。

 「5G関連ベンダーも、当初はコストの観点から、DX用途に5Gを提案していく計画にある。産業分野では人手不足や熟練者不足、作業員の安全確保、働き甲斐の維持、防犯、生産性向上や品質向上など、多くの企業現場に共通する課題の解決に5Gが利用されることになる」(小野氏)とした。

 5Gに積極的な投資が予測される産業分野として小野氏は、製造、運輸、建設、医療、メディアなどを挙げ、「人手不足などの課題に対して、革新的なソリューションの実現に取り組む分野での導入が進むことになる。中でも産業機器メーカーなど、製造業自身による5Gを活用した現場のDXや研究開発活動、それによって得た知見を自社製品と組み合わせて新たなソリューションとして販売する取り組みが、多くの企業に波及するだろう」と話す。

 5Gの最大のターゲットの一つは産業分野のIoTシステムであり、今後は産業分野で5Gネットワークを活用したさまざまなIoTアプリケーションが構築されることになるという。また、5Gは導入が容易であるため、「社会システム間の新たなデータ連携を促進すると考えられる」としている。

5Gと既存ネットワークとの利用意向(出典:IDC Japan)
5Gと既存ネットワークとの利用意向(出典:IDC Japan)

 同社では多変量解析をもとに、IoTに取り組む企業を「大量モビリティデバイス活用クラスター」「データ活用クラスター」「設備管理クラスター」「不活発クラスター」に分類している。この中で5Gに対して最も導入意向が高いのが、製造業などを中心とした「データ活用クラスター」であり、5G導入が最も早いのは、IoTなどの「大量モビリティデバイス活用クラスター」とした。

 また、ローカル5Gに対しては、44%の企業が「事業者がローカル5G網を所有しかつ運用し、自社はこれを利用する」という。また、同じ44%の企業は「自社がローカル5G網を所有し、運用も自社で行う」が占める結果となった。サービス型と自営型が同数だったが、ネットワークサービスとしては、サービス型が多い結果となっているのが特徴だ。小野氏は、「所有から利用への流れ、運用管理の必要性、スモールスタートなどが背景にある」とした。

 5Gの普及拡大に関しては、5Gサービスの提供エリアの早期拡大、5Gスタンドアロン構成の提供、コストの低廉化、デバイスやアプリケーションなどエコシステムの発展、自律運転や遠隔操作の安全性に関する法制度の整備など、企業にとっての5G利用環境が整う必要があり、やや時間を要すると予測。また、人工知能による画像認識などの技術の発展が5Gの利用にも影響するともした。

IDC Japan リサーチマネージャーの小野陽子氏
IDC Japan リサーチマネージャーの小野陽子氏

 「今後数年間にわたって、このような新しい技術と市場の成熟、法制度の整備が進むことで、5Gのユースケースの普及が加速するだろう」と小野氏は話す。

 さらに同社では、5Gの用途は新たな映像体験、現場の課題解決、社会システムの全体最適化の3つに集約されると定義している。小野氏は、「5Gは、まずはDXによって企業課題を解決するために導入される。そして、それらの取り組みは、サプライチェーンやMaaS(Mobility as a Service)、分散電源など、より広範な社会課題を解決する動きに広がるだろう。5Gは、データ社会の毛細血管のような役割を担う。そのためには、今後数年をかけて、QoSが担保された信頼できる無線ネットワークの進化する必要がある」と課題を示した。

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