10年以内に到達--次世代HPC“エクサスケール”は何をもたらすのか - (page 2)

Sumir Bhatia (Lenovo)

2020-03-31 06:30

 まとめると、今後数年間の気候変動と向き合っていく上でHPCは欠かせないツールになるはずです。

2.医療の診断や治療の向上

 ご存知の通り、現在多くの国の平均寿命が上がっており、米ワシントン大学の保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation:IHME)の調査によると、特にスペイン、日本、シンガポールの平均寿命は、2040年にはそれぞれ85.8歳、85.7歳、85.4歳になると予想されています。結果として、私たちの医療ニーズも複雑化が進んでおり、ヘルスケア業界では、継続的な対応が強く求められています。

 疾患の診断をより効果的かつ迅速にするとともに、ベストな治療法で医師をサポートする上でHPCは重要な役割を担っています。例えば、HPC対応の機械学習システムをトレーニングし、より広範なデータセットと比較することで、患者のスキャン画像などから異常状態を特定できます。

 バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターの研究チームは、眼科医が網膜疾患をより迅速に発見できるように支援することで、この技術の応用を調査しています。糖尿病性網膜症から黄斑変性症まで、さまざまな網膜疾患を診断するため、研究チームはセンターのHPCクラスターを通じ、分析モデルを利用して患者の目のスキャン処理を行っていました。

 ディープニューラルネットワークを一からトレーニングするために十分な画像がなかった中、限られたデータで問題を検知すべく、より大規模なデータセットでトレーニングされたモデルを再使用することで、研究チームは転移学習を発展させました。その結果、この機械学習アプローチは、よりまれな状況下でも、あらゆる種類の疾患に再利用できるようになりました。

 HPCがさらなる進化を遂げ、精度が高まることで、これまで以上に高精度の画像認識が促進され、全く新しい疾病分野の診断が期待されます。

3.次世代に向けた未来保証型システム

 今後数年間で予想されるデータの爆発的な増加に伴い、これまで以上に大量の情報を処理可能なマシンが必要となります。しかし、エクサスケールにより演算能力が1000倍上昇することで、エネルギー消費量という新たな技術的課題が登場します。

 持続可能性を維持するため、企業各社は、システムのより効率的な運用方法を見つけ出す必要があります。しかし、こうした問題の取り組みには、たとえばハードウェアの冷却に空気と液体、両方の使用など、非常に複雑なイノベーションが伴います。

 世界がエクサスケールスーパーコンピューターのメリット活用を目指す中、私たちは一丸となり、最もエネルギー効率の高い方法で、これを実現する方法を考える必要があります。

次世代HPCとは

 エクサスケールには、今後10年間のどこかで到達すると予想されており、おそらくは世界中の多数のグループが、偉業達成に向けて競い合っているはずです。

 しかし、気候変動、疾患診断、持続可能なエネルギー消費など、HPCがすでに取り組んでいるグローバルな重要問題に着目することも重要です。 こうした用途は、本当の意味でHPC技術の偉業であり、今後の可能性について大きな期待を寄せています。

Sumir Bhatia
Lenovo データセンターグループアジア太平洋地域担当プレジデント
Lenovo、Dell、Nortel Networks、HCL Group、Thakral Groupなどでセールスや事業開発、マーケティングの各職種で上級職を歴任。インドのBMS College of Engineeringで工学とコンピューターサイエンスの学士号を取得。現在、シンガポール在住

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]