システムが9日間停止で9割が12カ月以内に倒産の危機--BCP/DRPを考える意味 - (page 2)

尾羽沢功 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2020-04-02 06:45

BCP/DRPはITだけの問題ではない

 事業はさまざまな分野に分かれているため、それぞれのユーザーグループや事業部門、所在地、地域ごとに異なるプランを導入しなければならないことがあります。BCPとDRPにはITだけが関与するのではないことに留意してください。この検討の目的はビジネスのうち、どの分野を直ちに復旧しなければならず、どれにはそれほどのスピードが必要とされないかを判断することです。以下のことを自らに問い掛けてください。

  • 自社の非常に重要なユーザーは誰か?
  • それらの人々は業務遂行のためどのシステムへのアクセスを必要としているか?
  • それらの人々がそのシステムにアクセスできない場合は何が起こるか?
  • 自社のバックアップないしコンティンジェンシープランは何か?
  • どのシステムまたは事業部門が当面のクリティカルパス上にあるか?

 これらのさまざまなグループやプロファイルにそのそれぞれの独自のニーズに配慮して関わることにより、プランがより改善されるとともに、実際にそれを実行するにあたって万全の準備を整えることができます。効果的なプラン実行のため計画と演習を行ってください。

「9s」の意味

 「9s」とは9日間を意味します。米連邦緊急事態管理庁(FEMA)によれば、ITが9日間またはそれ以上失われた企業では、90%の確率で12カ月以内に倒産が申し立てられるとされています。混乱は短時間のうちに制御不可能なものとなる可能性があり、ITシステムのダウンは企業に極めて大きな損害をもたらし得ます。

 筆者が接したことのあるお客さまのほぼすべては99.999%、またはそれ以上のアップタイムを求めており、それにはもっともな裏付けが存在します。しかし、この水準の可用性には(それが実現可能であるとすれば)、それに見合ったコストが伴います。これはサイトやデータセンター(あるいは複数のデータセンター)全体に対し、このような高水準の可用性を維持しようと考える場合に特に当てはまります。

 お客さまの間の最近のトレンドはアクティブ/アクティブ構成のデータセンターです。しかしこれについて真剣に検討した場合、真のアクティブ/アクティブ環境に伴うコストやメンテナンス、その他の代償(たとえばプロファイルマネジメント)が多くの場合においてお客さまを思いとどまらせる結果となっています。

 私の経験ではアクティブ/パッシブないしホット/ウォーム型のサイトの方が通常は優れています。短時間のうちに稼働を開始できるウォームなサイトは、可用性とコストのバランスを取るうえで役立ちます。このようなサブとなるサイトがどれだけのスピードで稼働を開始できるかはデータ複製スケジュールによって決まります。

 もうひとつのアプローチはアクティブ/アクティブ/ピンドモデルです。このモデルでは2つの「ホットサイト」を置きますが、特定のユーザーを特定のデータセンターに紐付ける(ピン止めする)ことによりプロファイルマネジメントのような難問を回避します。

 それでは、どの展開モデルがふさわしいでしょうか? その回答はつまるところ、リスクに対する許容度、ダウンタイム継続への対応能力、どの程度の投資が可能化によって決まります。プラン作成に先立ち徹底した財務分析を行うことにより、より優れた情報に基づく判断が可能になります。

尾羽沢功(おばざわ・いさお)
シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長
1982年に高見澤電機製作所(現・富士通コンポーネント)に営業職として入社、富士通による買収後は富士通コンポーネントのドイツ支社長として赴任。日本ルーセントテクノロジー(現・ノキアソリューションズ&ネットワーク)と日本アバイアで取締役 営業本部長職、2005年からSAS Institute Japanで執行役員営業統括本部長、2013年からインフォアジャパン代表取締役社長を歴任。
2019年4月からシトリックス・システムズ・ジャパン代表取締役社長に就任、日本市場での営業やマーケティング、新規事業開発などを統括している

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