山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

新型コロナで経営危機に--新サービスで再起をかけるネットカフェとコワーキングスペース

山谷剛史

2020-04-07 07:00

 中国では、猛威を振るう新型コロナウイルス対策で多くの店舗が閉鎖されている。人が密集するネットカフェやコワーキングスペースも例外ではなく、多くの場所がいまだ閉鎖されている。中国で多くのこうした施設が経営危機に面していること、その中で新しいビジネスアイデアが出ていることを紹介したい。

 1月24日、中国政府がネットカフェなどを運営する企業に対して営業を一時的に中止する通知を発表し、それによって中国全土でサービスが停止された。いまだ多くの施設が閉まっている状況だ。当然ながら、テナント料は毎月発生するため、経営は厳しい状態である。

 企業の業務再開は進んでいるものの、ネットカフェやコワーキングスペースは後回しになっているという。地域差はあるが、例えば、湖北省では、業務を再開できる企業を分類している。まず、金融・保険業、物流業など経済活動に大きな影響を与える企業を優先的に許可し、次いで工業・農業系企業、会計事務所、法律事務所などが入り、その後に飲食・書店・酒場・映画館などのサービス業が続く。ネットカフェやコワーキングスペースはサービス業に分類されるため、許可されるのは最後になる。

 コワーキングスペースを借りるのは小規模企業がメインだ。清華大学と北京大学が995社の中小企業を対象に実施した調査によれば、新型コロナウイルスでほとんどの業務ができない中、34%の企業が「1カ月しか企業を維持できない」、33.1%が「2カ月までは維持できる」と回答している。コストを削減しなければ数カ月と生き延びられない中で、真っ先にコワーキングスペースのテナント契約が解除されるという状況だ。

 全てのコワーキングスペースが緊急事態に陥っているというわけではない。上海市政府は2月、中小企業が上海市の国有企業の不動産を借りて営業活動する場合、2~3月の2カ月分の賃料を免除するという支援策を発表した。これにより、上海にあるハイテクパークを拠点とするコワーキングスペースのテナント料は免除された。だがあくまでそれは一部のコワーキングスペースであって、その恩恵にあずかれないところも多い。

 このように多くのネットカフェやコワーキングスペースが危機に瀕している。

 中国のネットカフェはゲームセンターのような雰囲気で、そこで最新スペックの高性能ゲーミングPCでオンラインゲームをプレイするというのが多くの利用者の楽しみ方だ。報道によれば、あるネットカフェのオーナーは、保有する端末をレンタルで貸し出すことにした。ハイエンドなゲーミングPCを日額30元(約450円)のデポジットで利用できるというものだ。

 また別のネットカフェは、端末環境をリモートで再現する「クラウドネットカフェ」を稼働させた。ネットカフェの端末をリモートデスクトップサーバーに設定して、遠隔から利用するというものだ。遅延が発生するなどして満足に利用できなそうだが、ネットカフェ向けのプラットフォームを提供する順網科技という企業が新たに専用のオンラインサービスを開発したとしている。

 ただ、ネットカフェはスマートフォンが普及する前に流行ったもので、30代の利用者にとっては青春の場所である。PCのスペックも重要だが、場の雰囲気を求めて利用する人が多いそうで、こうしたネットカフェの新サービスを試す人はまだ多くないようだ。

 一方、コワーキングスペースでも新しいビジネスを打ち出す企業がある。北京に展開する「共享際(5Lmeet)」というコワーキングスペースだ。共享際は、シェアハウス、コワーキングスペース、ジムなどの生活空間を一体化した宿泊施設を提供している。新型コロナウイルスで企業が平常業務への復帰が難しい中、共享際は営業再開が難しいマンスリーマンションやホテルと提携。そこにコワーキングスペースを作って、ホテルの各部屋に社員各人が住めるようにしている。また利用者への食事提供のほか、利用者の体温測定や、毎日定時の消毒殺菌を支援するというものだ。

 各社の試みが今後成功するか否かはまだ分からないところだが、日本も他人事ではない。こうしたビジネスアイデアを必要であれば参考にしていただければ幸いだ。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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