「Coco Pops」や「Pringles」など、朝食から夜のおやつまでの食品を製造している米国のKellogg'sは、行動科学に基づいてさらなる洞察を得るためのAI活用で先頭を走っている企業だ。
Kellogg'sはQualcommとともに、顧客が買い物をしている際の振る舞いを調べるために、仮想現実(VR)ヘッドセット内で視線を追跡する技術を開発した。ユーザーが仮想店舗内を歩き回ることで、このデバイスはユーザーの注意を引いた製品や長い間見つめていた場所に関するデータを収集する。これらのデータはその後、何が購買行動のきっかけとなるかを理解するためにMLアルゴリズムに入力される。
Kellogg'sで行動科学関係の指揮を執っているStephen Donajgrodzki氏は、最近ロンドンで実施されたカンファレンスで、人々が行動を起こす真の理由を同氏のチームが理解する上でAIが役立つという点と、顧客の購買行動のメカニズムがいったん明確になれば、購買に関する顧客の意思決定に影響を与えられるようになるという点を説明した。
Donajgrodzki氏は「AIとデータは、われわれが目を向けるべきものを理解し、変更を加えるべき場所に関する仮説を立て、その変更を評価する上で本当に有用だ」と述べ、「人の振る舞いの詳細を理解できれば、その振る舞いを変えられる可能性を400倍にすることができる」と続けた。
Kellogg'sの事例におけるポイント:同社は新しい「Pop Tarts Bites」の製品を発売するにあたって、この新しいVRヘッドセットを使ったパイロットテストを実施し、有益な知見を得た。このアルゴリズムにより、新製品を店内に配置する際には陳列棚の低めの位置に置くのがよいという、今まで信じられていたノウハウとは異なる事実が明らかになった。これにより、テスト中の「Pop Tarts」ブランド全体の売上が18%増加したという。
Donajgrodzki氏は「これらのシステムは、具体的な目標をより容易に達成する上で役立っている」と述べ、「全体的な状況に関してより優れた視点が得られた時点で、個々の振る舞いを変える方法についてのより優れたアイデアが得られる」と続けた。
これは人の行動を管理するというだけの話ではない。大量の情報を処理/分析するというAIの能力は、大量のデータを扱う製造業のような業界において、サプライチェーン全体の効率向上も約束してくれる。
次に石油及びガス業界に目を向けてみたい。同業界にはパイプラインや海上のリグ、貯留タンク、油田、油井に関する大量の情報が日々あふれている。このため、リアルタイムでデータを正確に処理/解釈できる技術から多くのものが得られるはずだ。例を挙げると、異常や故障をより迅速に検出できるようになるとともに、予測メンテナンスも可能になる。