海外コメンタリー

AI活用の理想と現実--成功の秘訣を探る - (page 5)

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-04-22 06:30

 言い換えれば、より野心的な観点に立つということだ。起業家精神にあふれる一部の企業リーダーたちはその緒に就いている。James Lee氏もその1人だ。弁護士として20年の経験を持つ同氏は、法分野における、いわゆる訴訟手続きの「初期(判例)検索」段階を合理化するためにAIを活用できると気付いた。なお判例検索は、訴状を丹念に読み込み、最初の答弁書の草稿を作成する上で必要となる情報を収集するという、正確さが要求される、そして時間のかかる作業だ。

 Lee氏は、「IBM Watson」のモデルを膨大な数の訴状と、訴状に対応する答弁書で訓練すれば、答弁書の草稿を作成する上で鍵となる実体と関連を迅速に特定できることに気が付いた。同氏によると、人間であれば8時間を要する作業が、新たなテクノロジーを使えばものの2~3分で完了するという。

 Lee氏は米ZDNetに「最初は、要点がどこなのかを洗い出そうとしただけだった」と述べ、「その後、これは信じ難い機会だと気付いた。この種の効率性をポートフォリオ全体に適用すれば、絶大な効果が得られるという点でこれは画期的だ」と続けた。

 Lee氏は、自らが見つけ出した特定の問題をAIによって改善することを目的として、企業の法務部門や法律事務所向けにこのテクノロジーを販売するLegalMationという企業を立ち上げた。

 Aurik氏に言わせると、現時点で実質的にAIの足を引っ張っているのは想像力の欠如だ。同氏は「皮肉なことに、AIの貢献が増えるほど、人間が必要となる」と述べ、「テクノロジーは存在しているものの、創造的なかたちで使うには人間が必要となっている」と続けた。

 創造性と想像力を求めること自体は間違っていないが、どのようにすれば企業でAIを役立てられるのかという疑問にはそれだけでは答えられない。とはいえ、CEO向けの実践的なアドバイスとして、Aurik氏とEsposito氏は「野望は大きく、しかし手始めは小さく」という点で意見の一致を見ている。

 Esposito氏は小規模環境でのパイロットテストの実施を提案している一方、Aurik氏は業績に結びつく具体的なビジネスケース(「それが買収だろうが、新規市場だろうが、何だろうかなど、気にしない」とのことだ)を見つけ出し、ゆっくりと弾みをつけながら、「自らのやり方で(着実に)進んでいく」ことを推奨している。

 限定したユースケースから開始するのは、着実に価値を生み出すためだけではない。Esposito氏が指摘しているように、これは初期の段階から優れた業務プラクティスを取り込む唯一の方法でもある。

 同氏は「企業は透明性やコンプライアンス、プライバシー、セキュリティといった懸念を感じ取った場合、さらにAIの採用をためらうようになる」と述べ、「倫理的な要求を考慮しつつパイロットテストから手をつけ、徐々に規模を拡大していけば、業務上のプラクティスにつなげられる」と続けた。

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