倫理的なAIや、責任あるテクノロジー、偏見のないアルゴリズムなど、イノベーションを制御不能に陥らせないようにするための配慮がIT業界で叫ばれるようになってきている。こういった流れのなかで多くの企業が、無責任なほどにパワフルで不透明なツールへと発展していきかねないアルゴリズムの配備に二の足を踏む理由は、簡単に分かるはずだ。
Gartnerが企業を対象に実施したある調査によると、AIの採用を阻む難関として第3位に挙げられていたのがデータのスコープや品質に対する懸念だった。その理由は、信頼性の低いデータが偏見を生み出し、信頼を損なうのは間違いないためだ。
Aurik氏は「人々が気にかけているのは、プライバシーと秘密保持であり、これらはAIを採用するという願望を後押しするものにはなっていない」と述べ、「最も初期の時点で正しい戦略を採用しなければならない理由がここにある。これこそ、多くの大手IT企業が見誤っている点であり、現在大きな反動が生じている理由だ」と続けた。
一部の企業は、資金投入を通じてか、機能アップデートを通じてか、また(極めて不毛な)AIの倫理委員会を通じてかにかかわらず、自らが生み出した倫理的な問題によるダメージを修正しようとしている。そして研究者らは、こういった企業が現在、倫理面で努力を続けているにもかかわらず、責任あるITという考え方によって詰まるところ、業務モデルの「中核ロジック」に対して難問が突きつけられると指摘している。
しかし、そのような方向に進む必要はない。そして企業が戦略を立案する初期の段階から倫理を考慮しておけば、そういった道に追いやられることもない。Esposito氏は「実際のところ、簡単な話ではない」と述べるとともに、「しかし、大がかりなプロジェクトから始めた場合、間違いなく落とし穴ができてしまう。このため、規模を小さくまとめる必要がある」と続けた。
では、AIに向かうべきなのだろうか、それとも向かうべきではないのだろうか?実際のところ、企業にはさほど多くの選択肢が残されているわけではないようだ。Aurik氏は、このアルゴリズムがもたらす革命に乗り遅れることは誰の利益にもならないという点を強調し、「AIを受け入れなければ、会社は行き詰まるだろう」と述べた。
Aurik氏は、このテクノロジーが十分に行き渡るにはあと数十年かかるだろうと考えている。しかし、少なくとも大企業レベルでは、今しばらく「AIの冬」を続けるという選択肢は残されていない。今が行動を起こす時だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。