1957年に創業し、宿泊特化型ホテルやレストランを運営するグリーンズ(三重県四日市市、従業員数2215人)は、40カ国、7000軒以上を擁するホテルブランドの「チョイスホテルズ」と、60年以上にわたるホテル運営の実績と信頼を持つ「グリーンズホテルズ」の2つを事業の主軸としている。
機能性と快適性を重視して全国の主要都市の駅周辺に多く展開するチョイスホテルズと、集宴会やレストランなどを兼ね備えた東海や北陸、西日本を中心に展開するグリーンズホテルズという異なる特性を持つホテル事業を融合し、幅広いニーズに応えてきた。
襲いかかる“人材不足”の波
国内の労働生産人口の減少が進むなか、旅館、ホテル業界は全般的に深刻な人材不足に悩まされている。不規則な勤務形態、深夜労働も発生するなどの労働環境を要因に、高い離職率や人材の教育や育成が困難という課題を業界全体で抱えている。
グリーンズも、こうした業界全体の人材難に対する懸念を抱く企業の1社だ。優秀な人材の確保や育成などに向けた取り組みを強化しており、2019年4月には人財戦略室を創設。従業員アンケートや階層別教育、研修などの企画、実施のほか、自己申告や社内公募による登用試験の実施などを担当している。
グリーンズ 人財戦略室 室長を務める石原昌佳氏
グリーンズの人財戦略室で室長を務める石原昌佳氏は「従来の部署だけでは、従業員の入社後フォローや教育、幹部育成まで注力できていない部分もありました。従業員の満足度向上やモチベーション、エンゲージメント強化の推進を目的に設立しています」と経緯を語る。
従業員満足度の向上が顧客満足度の向上に
現在、グリーンズでは従業員満足と顧客満足、企業利益の因果関係を示したフレームワーク「サービス・プロフィット・チェーン」に基づいた従業員満足度(ES)向上に取り組んでいる。
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サービス業で顧客接点の最前線にいる従業員の満足度向上を重要視する考え方で、ESの向上が提供サービス水準を向上させ、顧客満足度(CS)を向上させ、最終的に企業の業績向上につながるというものだ。
コミュニケーション活性化と業績に相関関係
ESの向上を目指す同社は、「従業員間のコミュニケーションの活性化」に着目。これまで6年ほど実施してきた従業員アンケートや調査の結果と各店舗の業績を比較すると、相関関係がみえたという。「業績の良い店舗の特徴を分析したところ、従業員間のコミュニケーションが上手く取れていたり、お互いのことを尊重したり褒め合うという風土があることが見えてきました」(石原氏)と分析結果を説明する。
実際、各店舗ではコミュニケーションの親密度に差異が見られていた。シフト制の勤務体制を取る多くの店舗では、業務引き継ぎのためのコミュニケーションが中心。月1回ほど実施している職場会議で日ごろの業務の振り返り、改善活動などを話し合う機会を設けるものの、必ずしも十分とは言えないケースも出ていたという。
そこで同社は、コミュニケーション活性化の施策として「サンクスカード」の導入を検討することにした。