「感謝の循環」で従業員満足度向上--サンクスカードで狙う企業風土改革の実際 - (page 2)

翁長潤 藤代格 (編集部)

2020-04-13 07:00

「ありがとう」の度合いを可視化

 サンクスカードは、普段の感謝の気持ちを気軽に伝えることができるツールとして注目を集めている。「誰がどんな内容の感謝を受けているか」を数値化し、質、量的に可視化できる。ES向上の施策として目標設定が容易な点も後押しし、導入企業が年々増えているサービスだ。

 サンクスカードを利用したES向上実現に向け、2018年8月からの5カ月間で6店舗を対象とした有料サービスを試験導入。しかし、「機能や種類数が多いとそれだけ使いこなすことが難しくなります。全社展開を視野に入れていたため、費用対効果を考えて導入を断念しました」(石原氏)。自社に適したツールを探しているなか、オウケイウェイヴ(渋谷区)の「OKWAVE GRATICA」に着目した。

 OKWAVE GRATICAは、500種類以上のカードテンプレートの中から選んで、従業員同士で普段の感謝を気軽に伝えることができるサービス。感謝の循環を促進することで、社内コミュニケーション環境の向上や組織活性化を後押しする。

 また、カードにチップを添えることで「ありがとう」の度合いを可視化できる仕組みを採用。管理画面では期間別にサンクスカードの送信枚数やチップ数を確認できる。初期の導入支援、活用支援サービスなどを除けば、すべての機能を無料で利用できる点も特徴の1つだ。

 シンプルで使いやすい点と運用コストを考慮してOKWAVE GRATICAを導入。2019年1月に先行運用したチョイスホテルズ事業部では「面白がって使ってくれ、上手く運用できていました」(石原氏)と好感触を得たという。先行部署を対象とした従業員アンケートでは、「風通しのよさ」が12.2%、「会話の多さ」が14.3%上昇したという。

キャンペーンで利用促進--送信数以上の効果が

 全社プロジェクトの一環として進め、9月から全社展開を開始。各事業本部からメンバーを募り、6人からなる推進チームを結成。現場の生の声を聞きながら利用促進に取り組んでいる。

 「最初は、新しい物好きな従業員を中心に興味を持って活用してもらえました。しかし、積極的に活用する店舗とそうではない店舗が出てきました。送信枚数が少ない店舗のなかには、上長を中心に“数値的な効果がないと納得して活用してもらえない”こともありました」と石原氏は振り返る。

 そこで人財戦略室では、2020年1月から2月末までの2カ月間、全国110部署を対象とした利用促進キャンペーンを実施。所定枚数の目標値を設け、達成部署にはお菓子などのインセンティブを進呈することにした。

 その結果、キャンペーン以前よりも送信枚数は大幅に増加し、2月末には約4000枚が送信された。29部署がミッションを達成したという。

 利用促進キャンペーンを通じて、送信枚数の増加以上の効果が現れている。例えば、サンクスカードをきっかけに従業員間の直接的な対話が増えたという。石原氏は「サンクスカードを送るには、その対象となる同じ職場の仲間をよく観察することが求められます。仲間に対する興味を持つことにもつながり、チームとしての意識、従業員同士の関心度が高まる機運が得られたと考えています」と説明。相手が困っている場合は率先して手助けをするという動きにもつながるという。

 また、エリア内の上司、部下間にほぼ限定されていたやりとりは、キャンペーン以降他部署間で増加。ある店舗で実施されたサービスの内容が伝達されるなどナレッジの共有にも一役を買っているという。

 同社では現在、社内コミュニケーションにおける「店長」「課長」という役職での呼称を撤廃している。一緒に働く仲間という意識を高めるため、「さん」付けで統一するなど企業風土の変革を目指しているという。

 「お客さまや社外の方から“当社の従業員は誠実で真面目”という評価を多くいただいています。今後もお客様により安心感を持ってもらえるように何事にも誠意を持って柔軟に対応できる人材の育成に努めていきたいです」(石原氏)と今後の展望を語る。

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