内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

「DXの実践」で注目すべき4つの領域--企業が社会・産業のデジタル化に対応するには

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2020-04-15 06:00

 前回「そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か」では、DXへの取り組みは「DXの実践」と「DXの環境整備」の2つに分けることができると述べました。今回は「DXの実践」において注目すべき4つの領域を紹介します。

企業に対応が求められる4つの潮流

 現時点において注目すべきDXの潮流としては、「社会・産業のデジタル化」「顧客との関係のデジタル化」「組織運営・働き方のデジタル化」「デジタル化に対応したビジネス創造」の4つの方向性が考えられます(図1)。

 これらの4つの潮流に対応する形で、デジタル技術を使って事業や業務を変革する「ビジネストランスフォーメーション領域」、顧客のデジタル武装に対応する「カスタマーエンゲージメント領域」、新しい働き方と組織運営を切り開く「フューチャーオブワーク領域」、デジタルを前提とした事業や業態を創出する「デジタルエコノミー領域」の4つの領域が挙げられます。

図1.注目すべきDX実践の4つの領域(出典:ITR) 図1.注目すべきDX実践の4つの領域(出典:ITR)
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ビジネストランスフォーメーション領域

 企業が社会・産業のデジタル化に対応するために、デジタル技術やデータを活用して従来の事業や業務を大きく変革することを「ビジネストランスフォーメーション」と呼びます。事業領域を大きく変えたり、新規事業を起こしたりするわけではないが、商品やサービスの作り方や届け方を変える、取り引きや課金の方法を変える、顧客に提供する価値を変革することがビジネストランスフォーメーションに当たります。

 あらゆる業種に共通して事業・業務の変革に適用可能な技術の1つがIoTです。どの業種においても、設備、機器、モノ、人などの経営資源を活用して事業を行っていますが、それらの位置や状況をIoTによって可視化し、監視したり、制御したりできるようになっています。また、IoTによって収集された設備、機器、モノの状態や稼働状況などのデータを分析することによって、予防保全・予知保全、遠隔修復・自動修復などを行うことができます。また、人やモノの位置・移動・動作などを捕捉することによって、その後の動きを予測したり、より良い状態となるための最適化のアドバイスを提供したりすることも可能となります。

 製造業は、早期からデジタル化の影響を大きく受ける業種となることが予想されます。中でも、IoTを活用した製品のスマート化、3D技術を活用した付加製造技術、製造工程全般のデジタル化によるスマートファクトリーが、幅広い製造業において今後重要なテーマとなるでしょう。また、製造現場や倉庫・物流分野における人工知能(AI)やロボティクス技術の活用は高度化し、さらに自動化や無人化が進むと考えられます。ロボットアームや機器の遠隔操作も現実のものとなっています。

 流通業の中でも、とりわけ大規模な店舗を多数展開する百貨店、総合スーパー(GMS)、量販店にとって重大な課題は、ネットショッピングに対する優位性の確保となるでしょう。そのためには、接客を含む店舗内業務の高度化と、リアル店舗ならではの購買体験の提供が求められます。また、IoTを活用した顧客動線分析や店頭プロモーションも注目されます。

 また、メガバンクなどの金融機関では、店舗業務のデジタル化や事務処理の無人化を推進し、大幅な人員削減や配置転換を実現しようとしています。医療分野での遠隔医療、ロボティクス手術、医療画像や医療記録のデータ解析なども進展しています。

 その他、防災・防犯、高齢者の見守り、エネルギー管理、交通や物流の最適化などさまざまな事業・業務のデジタル化が進むと考えられます。

図2.ビジネストランスフォーメーション領域(出典:ITR) 図2.ビジネストランスフォーメーション領域(出典:ITR)
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