NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は4月22日、製造業に特化した業界協調型デジタル基盤やデジタル変革(DX)ソリューションを2020年度から展開していくと発表した。この取り組みは「Smart Factory」と呼ばれ、同社が目指す社会「Smart World」の1つだという。Smart Factoryには、データ活用に必要な機能を一括して利用できる「Smart Data Platform」が用いられている。
「近年、製造業就労者の減少が深刻化しており、限られた人員で従来の成果を維持・拡張することが今後の課題」とNTT Comは説明する。そのためには、現場業務の省力化、生産性の向上、業界内外のパートナーとの連携・協業を加速させることが必要だという。加えて、コアコンピタンス(他社にはない自社の強み)への注力と、業界内でリソースを共有できる「共創協調領域」の効率化を両立させることが大切だとしている。
同社は、2019年9月に提供を始めたSmart Data Platform上で、各企業における秘匿性の高いデータを安全に流通させる「DATA Trust」を備えた業界協調型デジタル基盤と、企業のコアコンピタンス強化を支援する製造業向けDXソリューションを提供していく。
NTT Comは、製造現場における共創協調領域の業務や重複業務について、業界協調型デジタル基盤を提供する。これにより企業は、自社のリソースをコアコンピタンスへ集中できるようになると見込まれる。DATA Trustでは、データの所有者がデータの利用条件や利用者を指定することで、秘匿性の高いデータを安全に流通・分析することが可能になるという。その結果、さまざまな企業のデータを共存させられる業界エコシステムとして、産業全体の競争力を下支えすることが期待される。
加えて、これまでNTTグループが取り組んできた人工知能(AI)やデータ分析の知見と、製造各社の技術・ノウハウを掛け合わせるほか、ローカル5G(特定エリアで使用する第5世代移動通信システム)やOT(社会インフラに必要な製品を動かすための制御・運用技術)セキュリティを活用して、製造現場のさまざまな課題を解決していくという。
Smart Factoryの具体策は以下の5つだとしている。
(出典:NTT Com)
- デジタルマッチング(設計/調達DX)
製造業全体の業務効率化に向け、3次元設計データによる部品(直接材)を調達するマッチングと、設計・調達業務の効率化を軸としたサービスを提供する。 - 組立加工DX
IoT技術を活用することで、工場の可視化や複数工場間の連携を行い、工作機械業界全体のDXを支援する。 - 化学プラントDX
アドオンセンサー(電池交換不要で防爆エリアにも設置可能な追加設置型の振動センサー)による異常検知、音声認識デジタル点検表、目視作業のAI画像解析による自動化など、運転・保全員の五感データを活用したアプリケーション、防爆インフラを提供する。 - デジタルツイン(実際の工場を仮想的に再現し、高度な予測に活用する技術)/アナリティクス
工場内で発生するデータをAIで解析する。品質予測・異常検知・運転最適化・要因可視化・自動制御などにより、コアコンピタンスにおけるDXソリューションを提供する。 - サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーに必要な原材料・中間材・製品・エネルギー・人に関わるデータを流通させるための基盤をパートナーとともに提供する。
NTT Comは、Smart Factoryの第1弾として、デジタルマッチングの実証実験を行い、デジタルパートナーも含めたエコシステムを構築することで、製造業のDXを後押ししていく。