セールスフォース、企業の新型コロナ対応を支援--CRMなど無償提供

末岡洋子

2020-04-23 07:00

 セールスフォース・ドットコムは4月22日、オンライン説明会を開催し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で変化を強いられる企業や対策の前線で受付業務に当たる保健所向けの業務システムを無償提供することを発表した。

 同社がCOVID-19対策の取り組みとして発表したのは、(1)公共領域向け、(2)在宅勤務の従業員向け、(3)中小規模ビジネス向け、(4)パートナーソリューションーーの4種類で、これらの取り組みをまとめたウェブサイトを開設している。

セールスフォースは「Salesforce Care」として新型コロナが関連した4つの取り組みを展開する
セールスフォースは「Salesforce Care」として新型コロナが関連した4つの取り組みを展開する

紙ベースの作業をデジタル化する保健所業務支援システム

 公共領域の取り組みでは、保健所の新型コロナ関連業務を支援するシステムの提供がある。同社は、3月末に千葉県船橋市の「船橋市健康福祉センター」で支援システムの運用を開始しており、今回はこのシステムを「新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ」として、他の市区町村の保健所でも無償利用できるようにした。

 同パッケージは、業務支援システムとSalesforceクラウド利用に必要なライセンスの2つで構成される。

 船橋市健康福祉センターでは、1日当たり300件もの問い合わせがあるなど、保健所の職員の業務が多忙を極めているという。業務プロセスは、住民からの問い合わせを起点に、その後は地元医療機関とのやりとりがあり、指定医療機関でのPCR検査、結果を受けての調査票の記入、さらには疫学調査濃厚接触者の調査、都道府県や厚生労働省への報告と続く。セールスフォースの保健所業務支援では、これら業務のデジタル化を進める。

 具体的には、各種帳票のデータベース化、相談記録などの電子化に必要な機能をそろえた。蓄積したデータベースを活用することで、集計や分析などもできる。これを利用することで、ヒアリングの効率化、転記の迅速化などが図れ、慣れていない応援職員の抜け漏れを防ぐなどの効果もあるという。

 執行役員 エンタープライズ公共・金融営業統括本部 公共営業部長の小暮剛史氏は、多くの保健所では「一件ずつ時間をかけて手作業をしているため、抜け漏れも発生している」と話す。データベース化や記録の電子化により、「情報伝達のための帳票類の作成を削減でき、何を聞かなければならないのかなどが明確になることで抜け漏れも防ぐことができる」と続けた。なお、保健所の職員が使うためのトレーニング期間として、「1日数十分、2日ほどで使えるようになっている」(小暮氏)という。

 同社はこうした仕組みだけでなく、自治体専用ネットワーク「LGWAN」への接続もオプションとして対応するなど、ネットワーク側でも保健所独自のニーズに応えた。

保健所のコロナ対応業務デジタル化を支援する「新型コロナ保健所業務支援システム」
保健所のコロナ対応業務デジタル化を支援する「新型コロナ保健所業務支援システム」

「Quip Starter」「Salesforce Essentials」なども一定期間無償に

 従業員向けでは、Salesforceのコラボレーションツール「Quip」のスターター版「Quip Starter」を無償提供する。QuipはPC、スマートフォンなどのモバイルデバイスに対応し、単一のドキュメントにメンバーが同時アクセスできるツール。変更履歴が分かり、メモやチャットも同じ画面で行える。

 マーケティング本部プロダクトマーケティング マネージャーの秋津望歩氏は、「業務遂行に必要な機能が一画面にある上、絵文字を利用することで心理的距離も近くなる」と話し、チームメンバーの作業状況が見えにくい、業務スピードの定価、心理的不安や孤独感など在宅勤務の課題を解決できるとする。

 中小企業向けには、特に規模の小さな企業向けに必要な機能をまとめた「Salesforce Essentials」を90日間無償提供する。Salesforce Essentialsの特徴について秋津氏は、「セールスフォースのノウハウが詰まったプラットフォームの上で必要な機能をシンプルに設定し、すぐに使い始めることができる」と説明した。営業担当者が持っている顧客情報をCRM(顧客関係管理)にまとめることで、リーダーはチームの状況を把握してビジネスを進め、データに基づいた助言ができるなどのメリットがあるとした。

 また先に買収完了したばかりのビジネスインテリジェンス(BI)ツールのTableau Softwareも、COVID-19対応支援としてデータ視覚化ツールの「Tableau Desktop」とデータ準備ツール「Tableau Prep Builder」を90日間無償提供する。利用条件は従業員が20人未満、ユーザーは10人までとなる。

 説明会のデモでは、Excel形式の受注データと営業データを組み合わせ、営業担当別に売り上げを表示したり、地図上に都道府県別の利益を表示したり、売り上げの推移をグラフ表示するなどした後に、1つのダッシュボードにまとめるなどの様子を見せた。

Tableau Desktopのデモ。地図と色を使って、都道府県別の利益が分かりやすく表示される
Tableau Desktopのデモ。地図と色を使って、都道府県別の利益が分かりやすく表示される

 最後のパートナーとの取り組みでは、同社のプラットフォーム上で動くアプリケーションのマーケットプレイス「Salesforce AppExchange」で、新型コロナ対応として企業が必要としている思われるソリューションを集めた「AppExchange COVID-19 リソースセンター」を立ち上げた。開設時で15社のパートナーが参画し、合計16種類のソリューションが並ぶ。その中には、電子署名機能により契約を電子的に進めることができる「DocuSign for Salesforce」、テレセールスの「bellFace」、LINEを利用したオンライン行政手続きの「GovTech Express」などがあり、一定期間無償で提供している。

 ここではハンコを不要にしたり、商談をリモートでも可能にしたりするなど、現在求められているソリューションがそろった。セールスフォース 執行役員 アライアンス事業 AppExchangeアライアンス部長の御代茂樹氏は、「今後は業種向けソリューションについても需要に対応できるように拡張していきたい」と述べた。

AppExchangeでは16種類の特別支援策が並んでいる
AppExchangeでは16種類の特別支援策が並んでいる

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