SAP、日本のデータセンターでSAP HANA Cloudなど提供

國谷武史 (編集部)

2020-04-23 13:45

 SAPジャパンは4月23日、日本のデータセンターで4~6月期から「SAP HANA Cloud」および「SAP Data Warehouse Cloud」のクラウドサービスを提供すると発表した。いずれもグローバルでは2019年に発表され、SAP HANA Cloudはインメモリーデータベース(DB)のSAP HANAの機能をクラウド環境で提供する「DB as a Service」をコンセプトに掲げる。SAP Data Warehouse Cloudはクラウドの処理能力を生かすと同時に、1つのツールでDBの設計からレポート画面の作成までをカバーする。

SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォームテクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサーの首藤聡一郎氏(2019年11月撮影)
SAPジャパン バイスプレジデント プラットフォームテクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサーの首藤聡一郎氏(2019年11月撮影)

 同日のオンライン会見に登壇したバイスプレジデント プラットフォームテクノロジー事業本部長 チーフイノベーションオフィサーの首藤聡一郎氏は、SAP HANAがリリースから10年目を迎え、ERP(統合基幹業務システム)のS/4HANAなどの基盤として稼働するほか、世界で約3万2000社がDBとして利用していると紹介した。最新のデータを高速に分析処理できる当初からの特徴によって、「限られた時間や経営資源を使って試行錯誤する回数を増やすことがHANAに対する評価」という。

 加えて首藤氏は、同社ではERPシステムに格納された業務オペレーションの履歴データ(同社では「Oデータ」と呼ぶ)と、顧客や従業員といったステークスホルダーが持つ感情や体験などのリアルタイムなデータ(同「Xデータ」)の相関性からビジネスの示唆を得て施策を実行することを重視していると話す。その根幹をSAP HANAが担っているとした。

 SAP HANA Cloudは、端的にはSAPが運用を行うマネージド型で提供されるインメモリーDB機能のクラウドサービスになる。従来の提供形態は主にユーザー企業がオンプレミス環境で利用するソフトウェア、あるいはIaaSプロバイダーが運用を行うクラウドサービスだった。

 プラットフォームテクノロジー事業本部 SAP HANA COE シニアディレクターの椛田后一氏は、SAP HANA Cloudについて従来機能に加え、仮想データアクセス、データ階層管理、柔軟なリソース管理の3つの新機能が特徴だと述べた。

 仮想データアクセス機能では、SAP HANAと連携するシステムの処理性能や応答速度などに合わせてDB上のデータをコピーした「仮想テーブル」「キャッシュ」「レプリケーション」を使い分けていく。これらは透過的でユーザーはその切り替えを意識することなく、データにアクセスできるという。

SAP HANA Cloudの仮想データアクセス機能の概要
SAP HANA Cloudの仮想データアクセス機能の概要

 データ階層管理機能では、頻繁に利用するデータを「ホットデータ」、利用頻度がある程度のデータを「ウォームデータ」、あまり利用されないデータを「コールドデータ」にそれぞれ分類し、階層的に管理する。これによりデータの利用頻度に応じてクラウドリソースの使用料金を最適化できるとしている。

SAP HANA Cloudのデータ階層機能の概要
SAP HANA Cloudのデータ階層機能の概要

 最後の柔軟なリソース管理は、クラウドではおなじみの利用状況に応じてすぐにインスタンスを増やしたり減らしたりできるものになる。椛田氏によれば、SAP HANA CloudではコンテナーやKubernetesを採用しており、わずかなステップでの操作を通じてリソースを手軽に変更できるようにした。

SAP HANA Cloudでの柔軟なリソース管理のイメージ
SAP HANA Cloudでの柔軟なリソース管理のイメージ

 一方のSAP Data Warehouse Cloudは、データウェアハウスのクラウドサービスだが、椛田氏は、「IT部門と事業部門のそれぞれのユーザーが共通して利用するデータ活用基盤として開発した」と説明した。やはりSAP HANAをベースとしており、複数のデータソースを組み合わせながらリアルタイム性の高いデータの分析や可視化を実現するという。

 例えば、1つのビュー上でIT部門がDBを設計したり、事業部門の担当者がCSVファイルをアップロードしてDBを追加したりしながら、分析プロセスの設計や加工、ダッシュボードでの表示までができる。IT部門が事業部門や他の管理部門に使用領域を割り当てたり、各部門に課金したりといった“サービス”化も可能にする。さまざまなシステム連携やアクセス制御といったセキュリティも担保しているとした。

SAP Data Warehouse Cloudのデモ
SAP Data Warehouse Cloudのデモ

 これら製品の今後の方向性について椛田氏は、首藤氏が述べたOデータとXデータの連携のように、「SAPシステム以外のデータも取り込み、過去のデータのみならず、リアルタイムなデータ読み、人工知能(AI)で予測もしていく。データの粒度もサマリーから明細までリアルタイムに可視化する」と説明している。

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