Canonicalは4月23日、Linuxディストリビューションの最新版「Ubuntu 20.04 LTS」をリリースした。同梱される各種のアプリケーションパッケージまで対象に含めた最長で10年の商用サポートと、アプリケーションや運用管理のレイヤーまで及ぶセキュリティ強化への取り組みがポイントとなる。
製品担当ディレクターのStephan Fabel氏はまず、新型コロナウイルスの流行を受けて今回の説明会がオンライン開催になったことに触れ、同社自体は数年前からリモートワーク体制を構築しており、今回の世界流行においても深刻な打撃を受けているわけではないと明かし、さらにUbuntuもCanonicalもともに健全に継続可能な状況にあるとした。
Ubuntu 20.04 LTS(開発コード名:Focal Fossa)は、2年ごとにリリースされるLTS(Long Term Support:長期サポート)版の最新バージョンとなる。同氏によれば、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった主要パブリッククラウド環境で広範に活用されていることに加え、オンプレミスデータセンターや、最近ではエッジクラスター環境での利用も急成長するなど、堅調に伸びているという。
日本市場においても「過去3年間は年率30%で売上成長している」(Canonical Japan リージョナル セールス マネージャーの柴田憲吾氏)という状況で「新技術をいち早く製品やサービスに投入したいと考えるユーザー企業にメリットを提供できている」(同氏)という。グローバル市場では、特に金融、メディア、ゲーミング、通信といった産業分野での採用が拡大しており、例えば、BT(British Telecom)では次世代の5G(第5世代移動体通信)向けインフラとしてUbuntuを採用しているとの事例も明かされた。国内では、Yahoo!Japanが同社内のデータセンターにおいて運用中で、同社の商用サポートや構築サービスも利用中という。
Ubuntu 20.04 LTSの主なアップデートとしては、セキュリティ面での強化と商用サポートの延長がなされた。セキュリティに関しては、以前からレイヤーごとにさまざまなセキュリティ技術や仕様に対応しているが、これまでの「ハードウェアとクラウド」「カーネル」「OS」の3レイヤーに加えて、新たに「アプリケーション」「運用」のレイヤーまで対応を拡大したという。
「Extended Security Maintenance」(延長セキュリティメンテナンス)と呼ばれる新たなサポートプログラムでは、従来の「ベースOS+デスクトップ」に加えて3万以上のパッケージに対しても最長10年のサポートが提供される。また、運用のレイヤーに関しては、さまざまなオープンソースソフトウェアのマネージドサービスが提供される。当初はApache KafkaやOpen Source MANO、PostgreSQLやMySQLなど、ミドルウェア寄りの9種類のアプリケーションが対象となっているが、今後ユーザーニーズに応じてカタログが拡張される可能性があるという。
マネージドサービスとして提供されるアプリケーション
このほか、Ubuntuの特徴としてFabel氏は、クラウド事業者やハードウェアベンダーなどを含む広範なパートナーシップが確立されている点や、ソフトウェア定義型ストレージ(SDS)への注力、Ubuntuのルーツともいえるデスクトップ環境への引き続きの注力などを強調した。なお、ハードウェアパートナーとの協業に関しては、Intelアーキテクチャーに対するカーネルコードの最適化などの取り組みに加え、IBMのメインフレーム「IBM Z」やLinux専用サーバー「IBM LinuxONE」でUbuntu 20.04 LTSがサポートされることを紹介。IBMがRed Hatを買収済みであるにも関わらずUbuntuが引き続きサポートされることに関して「Ubuntuに優位性があることを示すものだ」とした。